内容説明
学校に依存した近代教育は危機に瀕している。本書は、江戸の「知」を見直して、近代が切り捨ててきた「学び」の原点を追究する。
目次
1 貝原益軒の思想―教育・メディア・身体(近世における「気」の思想史・覚書―貝原益軒を中心に;「学術」の成立―益軒の道徳論と学問論;貝原益軒と出版メディア―『大学新疏』編纂と出版の努力;教育システムのなかの身体―貝原益軒における学習)
2 「知の伝達」メディア史の試み(「教育のメディア史」の構想―「文字社会」と出版文化;思想のメディア史の構想;素読の教育文化―テキストの身体化;日本近世における「四書学」の展開と変容;マス・ローグの教説―石田梅岩と心学道話の「語り」)
3 教育学と思想史の間(「江戸」への視線―日本教育史学の成立をめぐって;「江戸」からの視線―「他者」としての「近代」;荻生徂徠の習熟論と教化論―近世教育思想試論;教育の社会化と学習社会に向けて―歴史からの視点)
著者等紹介
辻本雅史[ツジモトマサシ]
1949年(昭和24)愛媛県生まれ。京都大学文学部史学科(国史学)卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程修了。同博士課程単位取得退学。光華女子大学・甲南女子大学教授をへて、現在京都大学大学院教育学研究科教授。文学博士(大阪大学)。専攻、日本思想史、日本教育史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぽん教授(非実在系)
2
寺子屋・和綴じ本といった、江戸時代における教育者と学習者を媒介する「メディア」が役割を果たした思想史について扱う。珍しい日本近世思想史×教育思想史×メディア史という組み合わせである。主な登場人物は、身体的に会得をさせる方法を重視し学習者目線である貝原益軒と石田梅岩。生涯教育・学習科学的な教育が主だった江戸時代に対して、近代以後はローコストで効率的な学校教育を展開していくという流れであるが、昨今の生涯教育論で不足気味な過去の実践経験・思想のピースを埋めてくれる点でも本書は貴重である。2018/12/26