出版社内容情報
― 「生きた化石」カモシカとめぐる進化の物語。 野生動物とガチンコで対峙する研究のおもしろさがここに! ―
登山の途中で、ふと姿を見せることのあるカモシカ。特別天然記念物として知られ、山の賢者とも呼ばれる存在だ。
そして、原始的な姿を今に伝える「生きた化石」でもある。
本書は、そんな不思議な動物に魅了され、研究に没頭した若き研究者によるフィールドエッセイである。
舞台は名峰・浅間山。カモシカの行動や生態を追い、観察と発見を積み重ねていく。
やがて森での調査にとどまらず、著者は過酷な高山帯へと足を踏み入れる。
そこで出会ったのは、山小屋に暮らす番人と、思いがけないカモシカたちの姿だった。
仲間の協力を得ながら研究を進めるなかで、その先に浮かび上がってきたのは──有蹄類の社会、その進化の原点であった。
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【 読みどころ―1 やんちゃボウズが研究者になるまで 】
「他人と同じじゃつまらない。自分の好きなことを見つけて、それを一生懸命やれ!」――両親の言葉を胸に、やんちゃな少年は研究者を志す。
素朴で飾らない文体からは、豪快でわんぱくな著者の人柄が伝わってくる。
大学で野生動物研究室に入った著者は、野生動物との邂逅や恩師、フィールドワークの達人たちとの出会いを重ね、研究にのめり込んでいく。さらに単独での観察から、研究はチームワークへ。カモシカたちの変化と重なるようにして、仲間や山小屋の番人と協力しながら成長していく姿も本書の大きな魅力である。
【 読みどころ―2 浅間山で繰り広げられるカモシカ動物記 】
登山者にとって、山でカモシカに出会うことは珍しくない。しかし、腰を据えて観察したことはあるだろうか。
著者は個体を識別し、名前をつけ、長期にわたり追い続ける。時に見つめ合い、時に襲われそうにもなりながら観察を続け、見えてくるのは、意外なカモシカの素顔や、繰り広げられるカモシカ同志の関係性のドラマだった。
浅間山を舞台にしたカモシカ動物記としても楽しめる一冊。
【 読みどころ―3 フィールドから進化の物語へ 】
観察で浮かび上がるのは、目の前のカモシカの暮らしだけではない。
「生きた化石」と呼ばれる彼らの社会性の変化は、太古の氷河期に草原環境が広がったことで多様化した有蹄類の進化史へとつながっていく。
目の前の発見から、過去の知見へ、そして進化の物語へ。現場から考察を広げていく醍醐味が本書には詰まっている。
【目次】
■目次
1章 有蹄類の楽園
2章 フィールド至上主義
3章 浅間山荘に生きるカモシカ
4章 カモシカ捕獲作戦
5章 新天地
6章 高山のカモシカ
7章 社会進化のはじまりを観た
8章 冒険は続く



