内容説明
対ソ開戦を本国に具申しようとした大島駐独大使と対立し降格された大久保は、決死の覚悟でソ連経由で帰国。欧州情勢の真相と一日も早い終戦を説いて回り、天皇にも「御進講」の機会を得た。そして戦況悪化による中立国外交団の軽井沢疎開にともない、外務省軽井沢事務所長を務めた。大久保は戦後になって、欧州で見た三国同盟の実像を回想録にまとめたが、これを広く公表することを許さなかった。戦後70周年の今年、大久保の孫にあたる著者によって、この回想録を検証した評伝が完成。本書巻末に、大久保の回想録全文を掲載。
目次
第1章 ブダペストへの道
第2章 合い言葉は「トリアノン」―大戦間期のハンガリー
第3章 「ヒトラーのあやつり人形」―一九四一年
第4章 ベルリンの在欧大公使会議―一九四二年
第5章 枢軸同盟の崩壊―一九四三年
第6章 御進講と外務省軽井沢事務所―一九四四~四五年八月一五日
終章 戦後の復興とともに
著者等紹介
高川邦子[タカガワクニコ]
1961年東京都生まれ。日本郵船(株)勤務の後、1991年より(株)NHKグローバルメディアサービス登録翻訳者として、NHKで翻訳に携わる。2001年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大久保利隆の孫(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くらーく
3
大久保ハンガリー公使ねえ。初耳でした。祖父の回想録を肉付けして裏付けを調べて本に仕立て上げたのですね。祖父孝行ですな。 結局のところ、せっかくの情報や意見も声の大きい癇癪持ちの人たちにより黙殺されたり、天皇陛下への上奏もあったかないのか。あったとしても、戦局には影響がなかったようで、残念です。せめて、1944年に敗戦の準備をしておけば、戦死者は半減以上していたでしょうね。本当に誰が責任者なのかが分からない大日本帝国ですな。それは、未だ変わらずだろうけど。 2021/12/04
Yasuhisa Ogura
1
戦時中に駐ハンガリー公使を務めたものの、反ドイツ的な態度から降格処分を受けた外交官の大久保利隆の半生を描いたもの。著者は大久保の孫だけに、公的記録だけでなく、親族しか知り得ないような情報にも基づいている。特に、大島駐独大使との関係は興味深い。また、1944年2月の段階で、天皇陛下に「ドイツは持って、あと1年から1年半」という内容の御進講したという事実も明らかにされている。その他、歴史のピースを埋めるような事実が明らかにされている。2021/10/26