内容説明
築城が終わると設計者は抹殺される。それは多くの築城家の上に落ちた運命だ。松永弾正の命をうけ多聞城と志貴山城の天守閣を築いた中村正清は脱走し、信長に拾われ安土城を完成する。しかし又もや正清は鬼門櫓に幽閉された…。あらゆる術策を以て築城家の不当な運命と闘い、生命と名を後世に遺した中村正清の稀有な一生を描いた「安土城の鬼門櫓」他、城に秘められた人間の野望、残酷さ、怨念を描いた傑作短篇集。
感想・レビュー
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キムチ
35
仙台 青葉城が遊び場、高校もその近く・・という事もあり城フェチになった。大阪で嵌ったのが高取城。北陸に居た時は丸岡城の雰囲気に惚れた。南條氏が綴る中身、9話のエピソード。ほとんど暗く、陰鬱な不条理もの・・江戸期の時代底はそういったものが多かった事が読める。安土・名古屋・大阪・春日山・稲葉山・熊本・姫路・彦根と鹿児島城。蘇鉄の話が面白かった。櫓・門・城壁・天守閣などの遺構の在り様は種々だが現存する、或いは再建されたそれらを見上げつつ、軍馬の嘶きや悲鳴、カチドキの声を夢想しつつ幻想に酔うのは面白い。
あにき
3
電子版2014/09/05
えびえび
3
城に伝わる伝説や城郭の構造の推察を元に物語を描きます。城の構造の解説は非常に細かく丁寧ですが、話の流れを切るようなことは無く、巧みな構成だと思います。オススメは熊本城の空井戸ですね。復讐劇の顛末がミステリー調に描かれててなかなか面白いです。全般的に残酷な部分が多いので、苦手な方は要注意ですよ~2013/03/04
半木 糺
1
「城」に翻弄される人々の悲喜こもごもを描く。南條作品らしく、残酷描写が多いが、綺麗ごとでないナマの人間の姿が映し出されている。中でも興味深かったのは「安土城の鬼門櫓」の築城師、中村正清の生き様である。自らの死期を延ばすため、安土城という「未完の城」をひたすら増築していく姿は鬼気迫るものがある。2001/01/30
SKH
0
短編集。パターン化。2016/07/31