内容説明
斉天大聖・孫悟空を崇め、口先だけだが憎めない猪八戒を好んだ中国人、唐高僧・三蔵法師を崇め、自国のカッパと結合させて影のうすい沙和尚(沙悟浄)に光をあてた日本人。中国古典文学をみつめ『西遊記』完成の道のりをたどり、中国文化の一要素として原本を輸入して訳本まで誕生させた、日本・朝鮮・ベトナム・チベット・モンゴル・満洲などの、『西遊記』の受容のあり方から東アジアの民族の個性をさぐる。
目次
1 中国古典小説の世界
2 中華の孫悟空ものがたり―『西遊記』のできるまで
3 アオザイ姿の孫悟空―ベトナム(越南国)における『西遊記』の受容
4 蒼き狼が招いた孫悟空―チベット・モンゴル・満洲における『西遊記』の受容
5 ハンガンを渡った孫悟空―朝鮮半島における『西遊記』の受容
6 江戸っ子短気な孫悟空―日本国における『西遊記』の受容
7 文明開化をたどる孫悟空―江戸人形劇から明治の新劇へ
終章 アジアのユーロは西遊記―東アジアの人々の好み
著者等紹介
磯部彰[イソベアキラ]
1950年生まれ、東京学芸大学教育学部B類社会科教育専攻卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。中国文学・東アジア文化史専攻。富山大学教授を経て、東北大学東北アジア研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
2
ふむ2022/12/21
ワタル
1
玄奘三蔵の説話について調べていて、その一環で手に取った本。求めていた情報はあまりなかったのだが、文章が非常に読みやすいし面白いしで、楽しんで読んだ。凡例から文章にユーモアがあり、“「深沙神」の信仰の歴史を無視しては祟りがある? と気をまわしたことによる”“仏教モンキー伝説”など、独特の文が非常に味わい深い。中国、日本のみならず、ベトナムやチベットなど、様々な国での享受史がまとめられていて、もう少し海外の教養が深かったらもっと面白かっただろう……と思った。2019/06/03
midnightbluesky
1
研究者の著者らしく、緻密な調査でコウベが垂れる。しかし、ところどころでくだけた妙な文章が出てきて、研究者の方も人間なのか、と変な納得。2012/07/22
惰性人
1
玄奘三蔵の仏教の教えを求める旅の記録が、どうやって中国各地の伝説を取り込んで、妖怪退治のアドベンチャー小説「西遊記」になったのか、そしてそれがアジアにどう伝わったのか。中国や東アジアの小説の歴史も踏まえ、なかなか興味深いです。2012/07/01
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