内容説明
最近の文献史学の成果をもとに楠木正成の実像にせまり、さらに彼が拠点とした千早赤阪村周辺での人々の顕彰活動の記録をまとめた。正成の実像と現在にいたるまでの受容を知るための一冊。南北朝時代の武将楠木正成、『太平記』に描かれたその生き様は、後世の人々に大きな影響を与えた。笠置伺候、千早城の戦い、桜井の駅父子訣別、湊川の戦い。しかし、その記述と史実とは合致するのか。同時代史料を駆使して『太平記』の内容を検証しながら楠木正成の生き様を明らかにする。
目次
楠木正成の実像に迫る(楠木氏の出自と正成の実像;楠木正成の挙兵;正成の再挙と鎌倉幕府の滅亡;建武の新政と正成;建武政権の崩壊;正成の最期)
楠公顕彰と千早赤阪村(江戸期の顕彰;明治前期の顕彰;大正期;昭和前期)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サケ太
21
生駒先生による、楠木正成の実像が読みやすくまとまった一冊。大きすぎる虚像が覆う人物の生涯を俯瞰して見れる。正成入門としてはかなり良いのでは。自分は、建武の新政における正成の具体的な優遇具合については知らなかったので驚いた。正成が顕彰されていった過程についても書かれている。良い1冊だった。2021/11/18
のれん
11
楠木正成中心の解説本だが、個人的には新鮮なテーマはなかった。 戦前で作り上げられた忠臣像の虚像っぷりと少数で粘り勝つ籠城とゲリラ戦を記述する太平記を考察する類いは今まで何冊もの正成解説で通った道である。 その考察の視点が違うわけでもないし、全体的に俯瞰してるため深いわけでもない。 辛辣に書いたが、逆に楠木正成について何も知らないなら、非常に分かりやすくまとめられた人物紹介本でもある。特に出生地である千早赤坂の史跡協会が出版してるので現地写真も多い。 大楠公ファンなら買っといても損はなし、といったところか。2021/12/04
浅香山三郎
10
近年、かつての忠臣としての楠公像を見直し、史料からみた楠木氏の歴史像を提示している生駒氏と、楠公の顕彰そのものを歴史的事象として検討する尾谷氏による論考。一般向けに、近年の研究を踏まへた楠木氏のすがたを紹介する本として、適切な構成となつてゐる。生駒論考は、楠木氏がもともと何らかの形で鎌倉幕府の関係者(得宗被官説もある)であつたとみてよく、やがて「悪党」的な畿内武士とのネットワークをもつてゐたことなどをはじめ、その性格と地域社会との連関をまとめ直し提示してゐる。また、尾谷論考は、南河内の楠公史跡の指定と↓2021/11/13
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- 和書
- ありがとう、あなたへ