内容説明
裁判員裁判が死刑判決にかかわるようになり、自己の生命をもって償うべき死刑という刑罰の是非をめぐる論議が高まっている。精神障害者や18歳以上の少年の死刑適応能力(理解基準、援助基準、準備基準)、再審請求能力は、死刑囚の接見交通権が極端に制限され、実情は闇のなかである。死刑廃止論が先進国の趨勢になりつつある一方、被害者・遺族の応報感情や国民意識に依拠した死刑存置論は、社会秩序の安寧維持のために死刑が必要と主張する。国の政治判断に左右される死刑をめぐるさまざまな領域に焦点をあて、問題の所在を徹底して抉り出した全編書き下ろし論集。
目次
座談会 死刑と精神医療―精神障害者への死刑にまつわる問題
精神障害者の場合を含む死刑問題と日弁連の見解
死刑と精神障害者
死刑と精神科医にまつわる問題
憲法から見た精神障害者と死刑―アメリカの経験
少年事件と死刑判決
死刑および死刑囚についての覚書
光市母子殺害事件の事実認定と死刑判決―謝罪追及の激しい声が事実を歪めるとき
死刑と精神科医
刑法39条を巡って―「死刑と精神医療」について考えるための予備的考察
死刑論の辺縁
著者等紹介
高岡健[タカオカケン]
1953年生まれ。精神科医。岐阜大学医学部卒。岐阜赤十字病院精神科部長などを経て、岐阜大学医学部准教授。日本児童青年精神医学会評議員。雑誌「精神医療」(編集=「精神医療」編集委員会、発行批評社)編集委員をつとめる
中島直[ナカジマナオシ]
1965年生まれ。1990年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、茨城県立友部病院医師、横浜刑務所医務部法務技官を経て、2001年から多摩あおば病院勤務、同院副院長・診療部長。法と精神医療学会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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