出版社内容情報
「精神鑑定」をめぐる諸問題はつねに古くて新しい課題を精神科医療に投げかけてきた。とりわけ現代は、一方で精神障害者のノーマライゼーションが叫ばれ、他方で心神喪失者等医療観察法が施行されるという、引き裂かれた状況にある。また、介護保険法と成年後見制度がスタートして5年が経過し、成年後見鑑定や民事鑑定の新たな課題が浮き彫りにされつつある。司法精神鑑定の新たな質が問われている現在、刑事、民事の両面から、広く「精神鑑定」の今日的課題を網羅した総力特集。
巻頭言=引き裂かれた時代の精神鑑定…浅野弘毅/◎特集論文=ノーマライゼーションの動向と刑事責任能力…富田三樹生/起訴前簡易鑑定の問題点…田中卓和・岩尾俊一郎/訴訟能力の周辺…中島直/刑事精神鑑定と治療…岩下覚/精神鑑定書とその公開…岡田靖雄/成年後見のための精神鑑定…白石弘己/「夫婦関係調整」事件における意思能力…山崎信之/認知症と遺言能力…浅野弘毅/◎連載=視点・12・医療観察法37条鑑定と審判をめぐる言説の分析…吉岡隆一/触法精神障害者問題に対する「日精協」の対応(2)保安処分案と心神喪失者法案への態度…中山研一/引き抜きにくい釘・15・阿修羅月記(前編)…塚本千秋/新・ルポ精神保健改革vol.9・街に溶け込んで息づいている地域医療と生活支援[那覇市]福の木診療所とふれあいセンター…芳賀幸彦+佐原美智子/少年非行をめぐって・8・保護観察官が少年の「不良措置」を考えるとき…羽間京子/◎コラム・医療従事者の二次的PTSDについて…河野節子/老いのたわごと・34・精神科診療所をやめる人のために…浜田晋/◎書評=村瀬学『自閉症-これまでの見解に異義あり!』(筑摩書房)…村上靖彦/石川憲彦+高岡健『心の病いはこうしてつくられる』(批評社)…大賀達雄/◎編集後記…岡崎伸郎