内容説明
膨大な文献渉猟に裏付けられた働く人たちへの熱いエール。マルクスが生き生きと描く近代資本主義の息吹。
目次
第3篇 絶対的増殖価値の生産(労働過程と価値の増殖過程;不変資本と可変資本;増殖価値率;労働日;増殖価値率と増殖価値量)
第4篇 相対的増殖価値の生産(相対的増殖価値という概念について;協業;分業とマニュファクチュア)
著者等紹介
マルクス,カール[マルクス,カール][Marx,Karl]
1818~1883。ドイツ生まれの思想家、共産主義運動の理論的指導者。ユダヤ教からプロテスタントに改宗した弁護士の父を持ち、自身も洗礼を受けた。ボン大学、ベルリン大学、イエナ大学で学ぶ。ヘーゲル左派として出発。ケルンで創刊された「ライン新聞」主筆を務め、終生の盟友フリードリヒ・エンゲルスと出会う。ブリュッセルで共産主義者同盟に加わり、48年、同盟の綱領として起草された『共産党宣言』を出版。翌49年パリからロンドンに亡命
中山元[ナカヤマゲン]
思想家・翻訳者。1949年生まれ。東京大学教養学部中退。インターネットの哲学サイト「ポリロゴス」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわうそ
33
絶対的剰余価値とは必要労働時間を除いた労働時間を引き伸ばして得られるものです。一方で相対的剰余価値は新しい機械などを導入することによってつまりは、生産手段を改良させることで生み出す剰余価値です。資本家にとっては相対的剰余価値を生み出すことも大切だけれども労働時間を単純に増やして直接的に労働力を搾取する方が簡単なわけです。このような理由から資本家はなるべく長く労働者を拘束しようと画策するわけでありまして、それを規制する法律さえなければ労働者が死ぬギリギリまで搾取したいのが本音というところでしょう。2023/10/05
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
2
労働と価値についての考察がなされた後に続く第八章「労働日」の記述は、商品を介して対峙する労働者と資本家の関係をその抽象的論理から具体的な社会状況として描くその論の運びの巧さという以上に、まるでディケンズの小説を読んでいるような読み物としての面白さがある。そして、価値・商品・生産という労働に関するこの一連の物語は、生産条件を共有する人為的な古代の協業と単一労働者が同一資本に集約される近代の協業の相違という観点から、協業の発展=資本の誕生=マニュファクチュアの功罪の持つ世界史的意義へと話が展開する。2016/12/26
タカオ
2
メインは第8章「労働日」だろうか。19世紀のイギリスでは、資本家によって大人も子供も信じられないほど長時間労働を強いられていたことが、しつこく書かれている。そこから労働者が労働時間の制限を獲得する困難が、よく伝わってきた。資本論第1巻第2分冊読了。折り返し地点です。2015/03/14
ゲニウスロキ皇子
2
やっぱりマルクスは面白い!資本主義的な労働がいかなるものなのかということを考える礎を提供してくれる。元来、労働者は主であり、機械は従であった。しかし、マニュファクチュア的な協業形態が膾炙するに従い、上述の労働者と機械との関係は反転してしまう。いわば機械に従属した労働者の誕生である。これが資本による労働者の搾取を可能にしている一条件である。こういった記述は、労働者には考えさせられる点が多い。他にも、資本主義社会の労働における時間と空間の特性など示唆的な論点が非常に多く、読んでいて飽きないっす。2012/09/29
0
再読。「交替という言葉を濫用して、トランプをシャッフルするように労働者たちをさまざまに混ぜ合わせ、労働者の労働と休憩の時間を日々さまざまにずらすことで、まったく同じメンバーで構成される労働者チームが、同じ時間に同じ場所で一緒に働くことがないようにしている」(p.296)このような「リレー・システム」は現代においても、日雇い派遣の「たらい回し」によって存続している。労働者同士が団結しないように、組織化されないように、分散させて統治する。2017/06/07