出版社内容情報
2025年には三人に一人が65歳以上になり、超高齢社会を迎える日本――。医療費をはじめとする社会保障費が増大し、認知症などの急増も予測される中、医療そのものの転換が求められています。病気を治すだけでなく、病気にならないための体作りや、病気後のケア、さらには介護まで、医療が保健や福祉とシームレスにつながる存在になってきているのです。
そこで重要な役割を担うのがICT、情報通信技術です。距離の壁を越え、膨大なデータの処理が得意なICTによって、境界を超えて人々が共創できる環境が生まれつつあります。その端緒が今やICT機器の代表格となり、誰もが手にしているスマートフォンです。
実は今、スマホアプリが“医療機器”として認証される時代が訪れています。スマホと連携するウエアラブル機器が取得した生体情報は健康管理、疾病予防にも使われ始めています。「携帯は病院内で使えないのでは?」、そんな疑問はもはや過去のものです(全て本書でしっかり解説しています)。
本書の著者である東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座は、iPhoneを病院内に3400台導入し、患者のケア品質向上のためのナースコールシステムの次世代化など推進しつつ、さらに次を見据えた様々なICTによる取り組みを民間企業とともに研究・開発、そして実践しています。本書は専門的な内容も含まれていますが、医療従事者、IT関係者だけでなく、健康で長生きしたいと考える全ての人に、超高齢社会の課題を解決する“未来の医療”を垣間見せてくれる一冊です。
【第一章 日本の医療の現状】
・安心の基盤、社会保障の再構築
・平均寿命と健康寿命の差
・安心の基盤であるはずの医療が抱える危機
・先進国でも事情が異なる医療・社会保障制度
・世界の介護制度
・政府が示した骨太の方針と日本再興戦略
・必然的な医療の目標変化
・マイナンバー制度を応用して医療分野に活用
・医療等IDを導入するメリットとは
・気になる個人情報との境界線
・改正個人情報保護法と医療情報の関係
・医療とICTの相乗効果が進む
【第二章 医療とスマートフォン】
・スマートフォンの活用は必然
・まずはタブレットよりスマートフォンの活用が優先
・PCではなくスマホで院内「一人1 台」を実現
・世界の医療現場で活用進むモバイル医療アプリ
・適切な情報を適切な人に適切なタイミングで送る
・患者自身がスマートフォンを持つことで膨らむメリット
・iPhoneとアンドロイドの二強が占めるスマートフォン市場
・iPhoneは使い勝手の良さで選ばれている
・環境の統一ではiPhoneが有利
◆Column 1◆
“大は小を兼ねず”、
スマートフォンとタブレットは似て非なるもの
【第三章 医療アプリが“医療機器”になる】
・ 医療機器は輸入超過が続く
・プログラムも医療機器として認証の対象に
・これからの医療アプリのニーズ
・医療をチームで支えていく
・医療者間、医療機関同士の情報共有を実現
・地域医療や救急にもモバイルアプリが貢献
・脳卒中患者の緊急対応をアプリがサポート
【第四章 病院ならではのセキュリティ】
・患者の情報を守る義務
・情報を守る三つの観点
・通信セキュリティを高める
・利用者からの情報流出を防ぐ
・ 一般企業におけるメールのセキュリティ
・スマートフォンのセキュリティ設定を共通化する
・クラウド利用にも目を向ける必要
・汎用クラウドサービスのセキュリティ
・医療用クラウドサービスのセキュリティ
◆Column 2◆
アップルとFBIの論争が浮き彫りにする
プライバシー新時代の幕開け
【第五章 電波の安全性】
・変わる携帯電話との付き合い方
・課題1 電波の影響が懸念される機器
・課題2 普及が進む無線LAN
・課題3 相互理解とマナーの啓蒙
・必要なのは新しい時代に向けたルール作り
【第六章 実際の病院導入】
・未来を見据えた活用
・3千400台を超えるスマートフォン導入
・看護師の情報基盤を改革する
・院内の一斉通知にも活用
・位置情報と連動する緊急招集システム
・セキュリティを考慮したモバイルコミュニケーション
・モバイルによる医療システムの刷新
・院内サービス向上にもスマートフォンが役立つ
・スタッフ向けの継続的な定着支援も課題
・大量導入と運用に耐えるデバイスの選定
・「キッティング」の真実
・大規模導入を効率化するApple Deployment Program
・医療機関に求められる最低限のセキュリティポリシー
・携帯電話利用ルールは機器への影響よりマナー
・Wi-Fiの運用ルールも必要
・組織の成熟度や目的に沿ってルールや制限は見直す
【第七章 導入準備と導入後の運用・管理体制】
・導入準備 電波調査からナースコールの工事まで
・導入準備 電話帳データの整備
・導入準備 利用者への説明、来院者や患者への告知
・運用開始後の管理者の負担を軽減する
・導入効果の高いモバイル端末活用に向けて
【第八章 スマホ医療活用の先にあるもの】
・IoTが生活を変えていく
・浸透しはじめたウエアラブルデバイス
・ウエアラブルデバイスがヘルスケアに役立つ
・医療研究の在り方が根本から変わる
・介護でもウエアラブルデバイスが役立つ
・リハビリにおけるVRの有用性
・現実世界に仮想現実を合成するデバイス
・今後注目されるウエアラブルデバイス
【第九章 医療とロボット】
・医療ロボットは実用段階に
・ロボットが身体・神経系の機能を改善・再生する
・クラウドで成長する人工知能
・ロボットアニメが切り開いたパートナーロボット分野
・AIBO、Pepper、その先へ
◆Column 3◆
慈恵医大と食の歴史、「病気を診ずして病人を診よ」
【第十章 20xx年、未来医療】
・私たちはどこを目指すのか
・新しい向き合い方へのヒント
・医師と患者の関係も変化する
・医療機関と民間企業が共創できる場
東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座[トウキョウジケイカイイカダイガク センタンイリョウジョウホウギジュツケンキュウコウザ]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よしば
Teruhisa Fukumoto
さるたん