出版社内容情報
多彩な文学世界を築いた小島の全容を知る全集!
底本
第1~9巻 鶴書房版全集(昭和42~45年)
補巻1「緑の騎士」(文藝春秋社出版部 昭和2年)
補巻2「聖体拝受」(新潮社 昭和44年) / 「長編小説芥川龍之介」(読売新聞社 昭和52年)
補巻3「わが古典鑑賞」(中央公論社 昭和16年) / 「芭蕉」(ロングランプレス 昭和45年)
「私の好きな古典 樋口一葉・芭蕉」(文化出版局 昭和46年)
特 色
☆小島政二郎の多年広範にわたる創作活動の中より、初期作品をはじめ小説・随筆など主要作品を網羅する唯一の全集。
☆復刻版全集発行にあたって、新たな視点から詳述した「解説」を補巻3に付す。
刊行にあたって
遠藤祐(昭和女子大学大学院教授)
小島政二郎(一八八四~一九九四)は、東京下谷に生まれ、慶應大学文科の出身。芥川龍之介の知遇を得て文壇に登場し、人情の機微をついた諸短編を創作集『含羞』(一九二四)にまとめ、世に注目された。しばらく母校の教壇にたち、事は成らなかったが、芥川の教授招へいに尽力したのは興味深い。昭和期以降はエンタテインメントの領域にも手を広げ、『緑の騎士』(一九二七)『人妻椿』(一九三七)ほかの長編に広範な読者を集めた。『眼中の人』(一九四二)を始めとする回想風の小説に、交流のあった文壇作家たちの風貌・姿勢をいきいきと伝え『わが古典鑑賞』(一九四一)などに国文学古典への造詣の深さを示している。また大いなる食通で、食材や料理に関する文章も多く、それらを収める『食いしん坊』(一九五四)以下は、それこそ味わい深い豊かな随筆集として著者の愉しみを読者も享受できすだろう。
生前十二巻本の全集(鶴書房、一九六七~七0)が企画・刊行されたが、残念なことに三冊をのこして中絶したため、今回、既刊分とあわせて遺された文業の全容をうかがうに足りる三巻を追補し、改めて『小島政二郎全集』を世に問うこととなった。多くの眼がその魅力に注がれるように─と希う。