出版社内容情報
こちらむけ 娘達 野良道はいいなあ 花かんざしもいいなあ 麦の穂がでそろつた ひよいと ふりむかれたら まぶしいだらう 大かい蕗つ葉をかぶつて なんともいへずいいなあ
著者紹介
1884~1924年。群馬県生まれ。詩人、童話作家。神学校を卒業後、伝道師として各地を転任しながら詩作を続ける。著書に「聖三稜玻璃」など。
内容説明
心を解き放ち自由な雲になる。初刊のデザインの香りをつたえる新しい愛蔵版シリーズ。
目次
春の河
蝶々
野良道
雲
ある時
こども
馬
朝顔
驟雨
病牀の詩
月
西瓜の詩〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
81
不遇の詩人・山村暮鳥の最後の詩集。さまざまな苦難の果てに辿り着いた透明な境地。飾りのない言葉で自然に寄り添う姿が、あたたかくも淋しい。「善い詩人は詩をかざらず。まことの農夫は田に溺れず。」(序文より)2019/06/28
ゆうゆうpanda
48
「おうい雲よ/ゆうゆうと/馬鹿にのんきそうぢやないか/どこまでゆくんだ/ずつと磐城平(いはきたひら)の方までゆくんか」表題に『雲』とあるから何篇も雲の詩があるかと思ったが、123編中たったの2編。それを表題とした詩人の意図を読み取るのが課題かと思う。10代で受洗。日露戦争後は宣教師として活躍。開墾者の三野混沌らの影響を受け野菜作りを始めるも、結核を患い病床に。「ああ、もつたいなし/もつたいなし/かうして/寝ながらにして/月をみるとは」混沌たちと営むおおらかないわきでの生活に思いを馳せ41歳の生涯を閉じた。2017/02/27
Tomoko.H
7
そんなに知らない作家だけど、何となく手に取ってみた。田舎の、陽の当たる丘の風景が見えてくるような、字面とともにそんな印象のものが心に残った。作風がずいぶん変わっていった作家なんだね、ひどく叩かれたこともあったんだ。2024/03/13
恋
5
威力ある田舎暮らしを覚える詩集。時の流れのゆるやかさ、素朴さ、慎ましさ、自然さを、なんてことのない老いた男性が呟いているかのような詩集なのだが、山村暮鳥という詩人が変遷の末に辿り着いた、信仰の境地でもあるらしい。暮鳥のいう芸術(彼は「妖怪」ともいう)にひどく共感した私は、読み進めるうちに彼に習って田舎に住みたいと考えてしまった。けれど暮鳥も愛の末、また芸術と信仰の果てに「詩がどんどん下手になること」を喜び、ここに己を根付かせたのだと思うと、模倣は彼に習うことではないと考える。愛することだ、それだけは解る。2024/01/28
あさ
4
この詩集は読むたびに必ず泣いてしまう。ほっこりとした長閑な風景の中に、一かけのさみしさがあって、その深さにやられる。読んでる時はその牧歌的とも思える背景に癒され、穏やかになる。その中に、突然入る現実と虚無感。 言葉にしたらふと消えてしまいそうなかたち、もの、きもち。そういう目に見えない不確かなものの、暮鳥の表現が好きです。2011/03/21