近代作家研究叢書<br> 長塚節研究 〈上〉

近代作家研究叢書
長塚節研究 〈上〉

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  • サイズ A5判/ページ数 343,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784820503385
  • NDC分類 910.268

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

154
《さやさやに水行くなべに山坂の竹の落ち葉を踏めば涼しも》…この歌について土屋文明は「竹の落ち葉を踏めば涼しも」は形式的だが全体に素直で厭みがないとする。《近江の海八十の湊に浮く船の移りも行かず漕ぐとは思へど》…高田浪吉は上の句について、万葉風の歌が多く読まれる今(昭和十年代)では形式的だが、節の時代なら創意を汲めるとし、また、多くの評者が「移りも行かず漕ぐとは思へど」に節の独自性を指摘する。概してアララギ同人達は形式の整いすぎた万葉調を不満としながらも、作者らしさが少しでもあればそこを評価するようだった。2021/04/15

夜間飛行

153
《秋雨の庭はさびしも樫の実も落ちて泡だつそのにはたづみ》は写生の名歌らしい。茂吉の評では…「樫の実が水溜まりに落ちて泡だつたといふ光景の如きは実に小事件」だが、俳句は「かういふ小事件も粗末には扱はなかつた」のであり、節はこの極意を俳人・子規から教わったという。アララギ同人による「長塚節歌集合評」は、自分で歌を観賞したあと答え合わせのつもりで読んだ。音読して心地よいと思った《息長の春かぜ吹けば貫ける秀枝の珠しここに咲く見ゆ》など、「詞が勝ちすぎ」と低く評価されている。自分の好みと同人評が違う時は参考になる。2021/03/24

夜間飛行

150
「千葉の野を過ぐ」の題で《千葉の野を越えてしくれば蜀黍(もろこし)の高穂の上に海あらはれぬ》…これは好きな歌で、合評での評価も高かった。ただし単純に海が見えた事を喜んでいるかどうかは判らない。一ヶ月後に「悼正岡先生」の歌群があり、《もろこしの穂ぬれ吹き越す秋風の寂しき野辺にまたかへり見む》と、蜀黍を読んでいるから、前の歌の時点ですでに師は重篤だったのかも知れない。状況が判らないと気持が掴みづらいのが短歌の困った所だ。ともあれ歌々を辿っていけば、ふとした心の揺れが軀の芯に触れてくるような感触は伝わってくる。2021/03/25

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