内容説明
のんびり構えた女たちよ、目を覚ましなさい。ヴィクトリア朝のジェンダー論。女性であるがゆえに背負わねばならない社会の不合理への断固たる反抗。
目次
カサンドラ(フローレンス・ナイチンゲール)
作品解説「カサンドラ」のヴィジョン(木村正子)
フローレンス・ナイチンゲールが抱いたフェミニストとしての不満―女性、宗教、そして『思索への示唆』(エレイン・ショウォルター)
「カサンドラ」ナイチンゲールとフェミニズム(宮子あずさ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かさお
26
ナイチンゲール執筆のフェミニズム自伝的小説及びその考察が掲載。ヴィクトリア朝時代、男性優位社会の犠牲となる女性の強い酸のような嘆きが延々と語られる。作中より→【家庭は偽善の茶番劇であり牢獄、自分ひとりの時間を持てるなら足を折ってもいい】ヴァージニアウルフの「自分ひとりの部屋」にも触れられ、男性の時間は女性の時間よりも貴重なのか?と現代でも通じる問いが投げかけられる。その頃日本は明治時代、初めての女医が誕生するものの、世間で女医滅国論(女医が国を滅ぼす)が唱えられ、頓挫。先人達の苦労あっての今なのだ。感謝。2023/12/24
棕櫚木庵
19
1/3) 若き日のナイチンゲールが,抑圧された女性としての思いを登場人物の独白に託した小説.成立のいきさつもあってか未定稿というべき状態で,構成,語り口,内容などが未整理のまま.心に浮かぶままをそのまま書き流した感じで,「小説家としてのナイチンゲールの才能は,大したものではなかったと認めざるを得ない」(訳者, p.165).一方,その歎きは,現在にもそのまま通用するものが多いようにと感じた(たとえば,仕事か結婚・家庭生活かの二者択一を迫られること).逆に言えば,ジェンダー,フェミニズムの問題について2024/04/06
臓物ちゃん
11
「自由!自由!ああ、神聖なる自由よ!ついにやってきたのね。ようこそ、美しい死よ!」20代のまだ何者でもなかった頃のフローレンス・ナイチンゲールが鬱々とした日々で溜め込んだ激情を吐き出すべくストーリー性とか完全無視して熱情のまま書き綴った知られざる小説とその解説。このような家父長制を破壊するフェミニストとしてのナイチンゲールが今まで評価されなかったのは「男社会のルールで戦ったほうが彼女にとって勝手が良かった」と解説に書いてあってヤバすぎだぜ。詰め込まれた教養の質の高さに魂がカッカとしてくる一冊。2022/05/16
kenitirokikuti
7
図書館にて。著者はもちろんあの看護婦のフローレンス・ナイチンゲールである。本作は、彼女がクリミア戦争での看護活動を行う前に書かれた著述集『思索への示唆』に収められたエッセイふう小説?。女史の生前に私家版として刷られはしたが、21世紀になってナイチンゲール著作集が刊行されるまでは英国でもアクセス困難だったそうな▲ナイチンゲールの読書リストにジョルジュ・サンドがあるそうな。言われてみると納得。2021/06/06
いずとも
3
読書好きのアメリカ人女性オススメの本。もちろん原書ではない。ナイチンゲールって、看護師のイメージしかなかったけど、女性の生き方についてこれほどまでに主張した人だったとは。2023/07/16
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- 和書
- 水と礫