内容説明
看護職は、テクノロジー(体温計や診断器や注射器や体重計、そして、人工呼吸器、吸引機、心電図モニターなど)を医師の手から譲り受け、それを使いこなすことで身体化し、目に見える働きを他にアピール(Devices=策略であると同時に、認めてもらいたいというDesires=願望でもある)してきた。しかし、それは一方で、ケアリングの本質である、病む人に寄り添い、語り合い、心身を癒やすという側面を背景に追いやるようなリスクを招いてしまった。こうして医師たちは、右のようなテクノロジーを身体化した看護師を、逆説的にもテクノロジーの一部と同一視してしまった。つまり、看護職は、テクノロジーを取り込んで地位を高めようと策略するが、同時に、取り込んだつもりが取り込まれてしまい、自己のアイデンティティを見失いかねない罠にはまりこんでしまう。「策略と願望」は、看護職集団の歴史にも見える、と著者のマーガレット・サンデロウスキーは浩瀚な看護とテクノロジーの歴史的資料を駆使して述べている。本書は、21世紀の今日、看護職の依って立つべき基盤は何について鋭く深い示唆を提出している傑作である。
目次
第1章 やっかいな関係
第2章 テクノロジーについての考察
第3章 手にした道具と物
第4章 医師のためのもう一つの目
第5章 真の看護とテクニカルな看護
第6章 目覚ましい看護
第7章 悩み多き境界線
著者等紹介
サンデロウスキー,マーガレット[サンデロウスキー,マーガレット][Sandelowski,Margarete]
ノースカロライナ州立大学チャペルヒル校看護学部キャリー・C.ボシャマー賞受賞教授。また、同学部が夏期に開催する「質的研究夏期研究所」のディレクターであり代表教授も務める。アメリカ看護学会の会員。ペンシルバニア大学にて看護学士号取得、ボストン大学にて母性・小児看護で修士号取得。コロンビア大学教師養成課程で教育修士号、ケース・ウエスタン・リザーブ大学にてアメリカ研究で博士号取得。研修の主題は、ジェンダーとテクノロジー、および質的研究の方法論。本書『策略と願望』に著した看護研究に加え、帝王切開、受胎・妊婦診断に関連するテクノロジー、および質的メタ統合(質的研究の解釈的統合)についての研究を行っている。『With child in mind:Studies of the personal encounter with infertility』は、アメリカ文化人類学会の医療文化人類学部会から優秀賞を受賞。「Research in Nursing & Health」誌などの編集者
和泉成子[イズミシゲコ]
1988年千葉大学看護学部卒業。1992年米国ワシントンDC、アメリカ・カトリック大学大学院修了、看護学修士号取得。米国のホスピス、日本国内の病院、看護系大学に勤務後、2003年、米国オレゴン州オレゴン健康科学大学大学院看護学博士課程修了。PhD(看護学)取得。「日本の看護師の中の看護倫理」が研究テーマ。2003年9月より福岡県立大学看護学部基礎看護学講座助教授
中岡彩[ナカオカアヤ]
1977年徳島大学教育学部養護教諭養成課程修了。北里大学病院にて約八年間看護師として勤務。1996年より在宅翻訳に従事。「Medical‐Tribune」他、医学看護学論文の翻訳多数
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