内容説明
『資本論』の根本的な見方―「ヒトとヒトとの依存関係」という「社会の正体」から資本主義経済をとらえなおすことで、その本末転倒な一人歩きを批判する見方―を、現代経済学の到達点から見ても通用する論理で新たに再構成した。
目次
第1章 なぜいまさらマルクスなのか
第2章 マルクスの社会分析の基本図式
第3章 「ヒトとヒトとの依存関係」として社会をとらえる
第4章 資本主義経済における搾取と蓄積
第5章 資本主義経済の歴史―搾取と蓄積のあり方の変遷
第6章 「モノとモノとの関係」という「見かけ」の現れ方
第7章 資本循環と利潤率という現れ方
第8章 本書と『資本論』の記述の異動
第9章 マルクス経済学の今後の課題
著者等紹介
松尾匡[マツオタダス]
1964年生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、立命館大学経済学部教授。理論経済学を専攻。論文「商人道!」で第3回河上肇賞奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takeapple
10
学生時代マルクス経済学の概説書やマルクスの本はよく読んだ。職場で出てくるのはマクロ経済学やミクロ経済学を基にした経済理論だったり、ソ連崩壊と中国の開放経済政策などから、マルクス経済学は古くなったかと思っていたが、れいわ新選組の山本太郎氏が教えを受けたのが松尾匡先生というので読んでみた。更に最近知った斎藤幸平先生などもマルクスのエコロジー的読み方を提唱されているそうなので、マルクスを読み直そうと思う。本書でなるほど現在のマルクス経済学について触れられたので、更に次に進みたい。2019/11/07
袖崎いたる
9
マルクス主義を支配される側を擁護するという、左翼的な自由主義の徹底と見る著者の本。歴史的悲劇ともいえる原理的マルクス主義と嘯いていた人たちの行動から、マルクス主義どころかマルクスその人に対しても苦手意識を持っている人たちへの解毒薬にもなるかも。いわば、非正規社員たちが仕事終わりの更衣室で己の待遇にグチを零す風景に「あなたたちの目的は手段に過ぎないのですよ」と微笑むようなマルクス思想を、著者の眼鏡で現代的に分類整理しながらの解説をする。ただしこの「図解雑学」シリーズの難点として、通読には向いてない観がある。2015/09/04
おおにし
8
マルクス資本論を学びたくて、入門書をいろいろ読んでいる。この本は今まで読んだ資本論入門書とは異なり、経済学というよりはマルクス思想入門書のようだ。「マルクスの立場は自由主義の徹底である」とか、「人と人の依存関係がうまく機能しないと、「社会的なこと(しきたり・ルール)」が独り歩きして人々を抑圧するようになる」など、とても興味深い話がでてくる。これらは資本論に書いてあるのか、それとも数理マルクス経済学者松尾先生の持論なのかよく分からないけど、ともかくこの話の続きをもっと知りたいと思う。2014/11/27
ア
3
わかりやすいしおもしろい!けど、筆者なりにマルクス経済学を現代風にアップデートしているので、「そもそものマルクス経済学」や「日本や世界でかつて流行ったマルクス経済学」がわからない…2019/11/25
新空调硬座普快卧
3
図解雑学シリーズにはもったいないほど(たいへん失礼)含蓄にあふれ面白い本だった。筆者が幅広い範囲の学問成果を実に深く摂取したうえで論述していることも伝わってくる良著だった。ツボの中のことならなんでも話せる研究者は掃いて捨てるほどいるが,全体を俯瞰できる人は少なく,筆者はその一人。2017/03/15