出版社内容情報
現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示する。
内容説明
現代中国の原型をかたちづくるとともに、東アジア史の転機ともなった明代。世界的危機の狭間で展開した財政経済や社会集団のありようを、室町期や大航海時代との連動もふまえて彩り豊かに描くとともに、民間から朝廷まで全体を貫く構造を鋭くとらえ、新たな時代像を提示する。
目次
第1部 形成
第2部 体制
第3部 乖離
第4部 社会
第5部 混迷
第6部 崩潰
著者等紹介
岡本隆司[オカモトタカシ]
1965年京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
104
世界史の教科書に明朝という中華帝国は出てくるが、足利義満の日明貿易と秀吉の朝鮮出兵しか縁がないためか日本人の関心は薄い。しかし皇帝(共産党)に権力を集中させ直接支配を図り、朝貢しか認めない高圧的な姿勢で他国に臨み(戦狼外交)、上海などの商業(経済)を意のままに動かそうとするなど、著者の指摘する明代の政治や経済のあり方や特徴は現代の習近平独裁と驚くほど似てくる。抑圧的な政治に対し民衆は宗族や秘密結社で対抗していき、これが清朝期も受け継がれ今日も続く中国の原型となった。中国の抱える歴史の重みは恐ろしいほどだ。2022/08/04
さとうしん
21
漢・唐とともに中国史理解の基本となる時代であり、かつ「つまらない時代」と目されてきた明代。「皇帝による天下の私物化」をキーワードに政治・社会経済・思想文化など明代の諸方面を概観する。読みどころが多いが、太祖の粛清のねらい、明朝独自の朝貢一元体制、皇帝・士大夫とともに逸脱した人物が目立った時代、実は似た者同士の内閣大学士と太監、陽明学左派に端を発する清朝考証学、明は一見北宋の繰り返しのように見えるが……といったあたりを面白く読んだ。繰り返しと言えば、現代日本も明の政治のコピーに見えるのが不気味だが。2022/07/20
ほうすう
17
「明代はつまらん」と極めて不遇な扱いを受けていた時代だが本書での解説はかなり面白かった。成立・経済・社会・政治と分かりやすく個々の皇帝や政治家たちの個性も描かれている。過度にグローバルに話が飛びすぎず、話が絞られていた点も読みやすかった。明は似たような政争が繰り返されるというが、個々に深堀すれば十分面白そうという事も表明されている。 ふと思ったが中国の明代と日本の室町時代はどこか似ているのではないか。昨今の室町ブームを思えば今後明代に光が当たることもあり得るのではと期待している。その嚆矢たる一冊であった。2023/02/23
MUNEKAZ
16
近代中国史が専門の岡本先生による明朝の概説。「門外漢」を強調するが、さすがに一般書を多く書いているだけあって、先行研究を上手に裁いて読みやすい。「北から南への支配」「朝貢一元体制」「天子による天下の私物化」と明朝を特徴付ける要素を抽出し、体制側の建前と社会の実情がついに交わらなかった特異な王朝の歴史を描いている。また同時代に生きた陽明学の祖・王陽明と放埒を尽くした愚帝・正徳帝を、思考と行動の一致という点から、明朝という「時代の申し子」と評するのは面白い視点だと思った。2022/06/06
ピオリーヌ
14
内藤湖南はじめ東洋史学の泰斗につまらない時代とされてきた明代。それは民間の経済・社会の力量増大とパラレルな現象であり、政治との関連が希薄化して、政治自体のスケールもどんどん矮小化したからであり、社会・文化が「面白い」展開を見せるようになったのと反比例するかのように、政治は「つまら」なくなったとされる。例えば何かと諸悪の根源とされがちである宦官だが、皇帝にとっては宦官・朝臣のどちらしかない二者択一であって、太祖が考案した唯我独尊の「絶対帝政」「私物化」体制からすればどちらがマシかというだけの話であり2023/03/20