内容説明
天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国―この美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証。
目次
序章 朝貢体制論の再検討
第1章 明の朝貢拡大策と礼制の覇権主義
第2章 貿易の独占と明の海禁政策
第3章 辺境社会と「商業ブーム」
第4章 十六世紀中国における交易秩序の模索と互市
第5章 清代の互市と「沈黙外交」
第6章 南洋海禁の撤回とその意義
終章 互市における自由と隔離
著者等紹介
岩井茂樹[イワイシゲキ]
1955年福岡県に生まれる。1980年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、京都大学人文科学研究所教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
近代中国では、朝貢と貿易を一元化し内外の民間商人の国際貿易を禁圧した明代を経て、清代では商人相互の行為として完結する互市の拡大が目指された。本書は、朝貢関係を基軸とする中国の外交と通商の多様性が示される。礼制にもとづく階層秩序でもなく、商業と資本の自由の領域を拡張する条約体制でもない、東アジア特有の秩序が18世紀の繁栄と平和を築き上げていたという歴史的事実にもっと目を向ける必要があるのかもしれない。理念や世界秩序と通商貿易の関係を改めて再考させる。そのような力が秘められた一冊。2021/03/23