内容説明
とどのつまり、科学的知識は信頼できるのか?科学的世界観の核心にわだかまる問題を、知識のあり方を捉え直すことで解決する新たなスタンディングポイント!
目次
第1部 論争はいかにして始まったか(還元主義と消去主義;奇跡論法による実在論の復興;悲観的帰納法による奇跡論法批判;ケーススタディ―熱素説;構成的経験主義からの実在論批判;決定不全性概念への反省)
第2部 論点は多様化し拡散する(対象実在論;構造実在論;半実在論)
第3部 論争を振り返り、未来を展望する(公理系アプローチからモデル中心的科学観へ;モデル中心的科学観と実在論論争;擁護に値するミニマルな実在論)
著者等紹介
戸田山和久[トダヤマカズヒサ]
1958年生まれ。1989年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、名古屋大学大学院情報科学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
4
ポパーを読んでいて、内容的に繋がる本書も読んでみた。科学的実在論と論理実証主義の系譜を語るのにポパーもカントもウィトゲンシュタインもでないのかよ! という驚きはあったが、紙幅の都合かな。科学史の逸話の例も最近のものが多いし。ただ、どうしても議論が最近の思想家中心なので、私のような素人には不安が残る。古い哲学者達の本で安心できるのは、論拠を古代ギリシャとかにまで遡るので、これ以上の根っこはありませんよと形だけでも示してくれるところだ。あと、現場科学者は実在論争に対しては冷淡だって書かれてて笑った。ですよねー2015/06/29
mtht
3
読了。http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1858434.html こちらの伊勢田氏の書評も併せて。僕は全くの門外漢なので「構造実在論」や「シロスの分割統治戦略」、およびギャリーの「観点主義」を扱った文献を見るのが初めてでした。(その他はまあ、みたことはある。)もちろん、半実在論も。とても面白く、半実在論の帰結はかなり納得いくものでした。対象実在論と構造実在論のいいとこ取りをしている感じが確かにしました。それに対して、最後の構成的実在論の帰結に関しては2025/03/31
素朴実在論くん
3
公理系からシステム系へ、科学哲学の重要な論点である実在論論争について、その歴史を検討しながら実在論を擁護する試み。成否はおれ程度の人間にはわからないが、入門書にはないやや踏み込んだ領域まで触れているくれるので非常に勉強になる。2025/03/11
Myrmidon
3
なんとか読了。戸田山センセイによる科学的実在論争の整理、紹介、ひとまずの決着、総括。珍しく(失礼)ギャグなしのガチ哲学論争なので非常にヘビーだが、とても面白い。筆者自身が現在最有力と考える構成的実在論に至るまで、科学的実在論争史を論理実証主義から始めて、具体的な理論と適用される科学史上の実例、批判・再批判などなどをガッツリ扱うのだが、公平な記述でありながら、実在論を擁護する筆者の立場が鮮明なので読みやすい。科哲の学生には必読レベルの教科書ではないだろうか。専攻でない方は『科学哲学の冒険』からが良いかと。2017/03/05
anaggma
3
対象の存在にコミットすることと理論的成功、工学的成功の違い。熱素の例を紐解いている賞は分かりやすい。形而上学的には、検出可能な性質と検出不可能な性質をもつ何かからなるが、検出装置の制約、認知能力の制約により、人間のつくるモデルは正確に類似することはできない、あたりが擁護しうる限界。2016/12/10