内容説明
近代的なネイションの底にあるものは何か?ナショナリズムはまもなく乗り越えられるという楽観的な見方を再検討するとともに、現在再び生命力を増しているエスニックな要素の起源を探り、前近代的な文化とアイデンティティの運命を明らかにした、待望久しい名著の邦訳。
目次
第1章 ネイションは近代の産物か
第2章 エスニックな共同体の基礎
第3章 歴史の中のエトニとエスニシティ主義
第4章 農業社会における階級とエトニ
第5章 エスニシティの存続とその消滅
第6章 ネイションの形成
第7章 エトニからネイションへ
第8章 伝説と風景
第9章 ネイションの系譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
64
著者はゲルナーの門下で、アンダーソン『想像の共同体』の大枠を評価しつつ、エスノとネイション、エスニシティとナショナリズムを区別して、エスニシティがナショナリズムの土台(「想像」の根っこ)のような役割を果たすのではという立場で論じる。第1部はエスニシティの歴史を古代から説き起こしていくが、史料的制約のせいもあってかヨーロッパ中心的に感じた。第2部ではそうしたエスニシティが近代以降のナショナリズムにどのようにつながっていくかを論じていて、ゲルナーやアンダーソンでモヤモヤしていた面になんとなく光が当たった印象。2024/09/22
海
2
ナショナリズムが大規模に現れたのは近代になってからであることを認めつつも、前近代のエスニシティがネイションの核となっていると主張する。なお、この本ではネイションは必ずしも国家を持つとは限らない。面白かったが、具体例が多すぎて主張が埋もれがちで読みにくかった。エスニシティがナショナリズムに必須と主張しているが、実際はどうなのか、若干疑問に思った。ナショナリズムがどの程度の差異を包摂できるのかに依るが、広範に当てはまるエスニックな共通性はエスニシティと言えるのか。2023/08/11
ゆみつき
1
ゲルナー、アンダーソンといった先行のナショナリズム研究に修正を迫る内容。ナショナリズムを近代に作られた/想像されたものと断ずる近代主義を批判し、「エトニ」というナショナリズムの根源にある神話・同胞意識に注目する。2016/05/20