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内容説明
食肉解体の現場で働く人々のそれぞれの物語。芝浦というのは、何でも起きる場所なんだよ。奇跡のようなことでも起きる。芝浦屠場に魅せられみずから現場で働き続けた女性ライターの手記。
目次
伊沢真澄に会う
現場初日
内臓処理作業場
桜さくら
確認会
伊沢さんのはなし
たたき場
ピースボート
冷やし中華
サナダ
東京の西端の街で〔ほか〕
著者等紹介
山脇史子[ヤマワキフミコ]
東京生まれ。ライター。日経ウーマン、日経流通新聞、リクルート、NTT出版などでフリーランスとして記事を執筆。1991年から98年まで、東京芝浦の食肉市場・屠場の内臓処理現場に通い、現場の仕事の数々を実際に習いながら働く人たちの話を聞くことをライフワークとした。屠場の現在について、あらためて取材を始めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
67
本来どんな仕事であっても貴賤はないものだが、屠場で働く人、牛や豚の皮を取り扱う人を、差別のような空気で語ることをたくさん見てきました。意識すればするほどそこに妙な空気を感じてしまう。映画では「ある精肉店のはなし」、出版では佐川光晴さんの「牛を屠る」があり、描く世界に、差別など微塵も感じることがなかった。この著書でも、出版までの時間を考えるととても繊細な思いが働いたことだと思います。これまで経験してきた作品も含めて、強い生命力を感じます。そして、私たちは、その生命を感謝しなければいけないのだと思います。2023/09/25
たまきら
51
芝浦屠場に、仏教団体の企画で見学に行ったことがあります。もちろん食に興味があって参加したのですが、労働組合の話を聞いて差別のすさまじさに呆然としました。あの数時間でわかったことが多かったので、10年近く通っていた著者の文章を期待して手に取りましたが、なんでしょうか、どこか「昔話」感が強く、あの労組の人たちの圧倒的な怒りや職人としての技術の高さといった肉体的なものが伝わってきません。戦犯として処刑された祖父の話など印象的なエピソードもあったんですが、どこか他人事口調で自分はリンクできませんでした。2023/06/16
つちのこ
39
タイトルからして単なる食肉業界のルポではないと察しがつく。著者が屠場に通いだしてから四半世紀もの間温めてきた作品だけあって、その間に父と娘の関係、ライターとしての成長、社会をしっかりと見つめる目が熟成されていくのが見て取れた。野菜や魚ではなく、豚や牛に関わることでなぜ差別されなければならないのか…差別される側に立った気づきや苦悩が突き刺さる。瀕死のカマキリの腹を突き破って勢いよく出てきた寄生虫のハリガネムシは、著者を縛りつけていた迷いからの解放を暗示するのだろうか。生々しい内容のなかにも清々しさが光った。2023/11/16
つちのこ
32
【再読】読みが浅かったのか、どうにも気になって再度手に取った。屠場を語るに切り離すことができない差別問題に対して本書での取り上げ方についてである。どこまで書くのか?書けるのか?そこには関係者との駆け引きもあっただろし、著者の悩みや熟考も半端ではなかったと思う。著者が筆を執るまでの四半世紀に差別意識がどれほど変化したのか、今、語ることができるのはここまでが精一杯ではなかっただろうか。赤裸々に描かなくても問題がもつ業の深さを十分に伝えてくれたと思う。2023/11/20
えも
22
ライターの著者が若い頃に取材し、のめり込んで結局7年も通った芝浦屠場の日々を、25年以上たって文章にしたもの。動物を屠殺し、解体し、肉や内臓を得る過程と、そして部落解放運動の様子が赤裸々に、いや、むしろ淡々とした筆致で描かれている▼仕事柄、この業界については平均以上の知識はあるつもりだけど、著者の書きぶりが肩ひじを張ってないものだからこそ、伝わってくるリアルがある。2023/12/19