出版社内容情報
人はなぜ、サッカーに熱狂するのか? 「文化としてのサッカー」を多方面から読み解く。イギリス・ブラジル・韓国のサッカー事情を分析した「熱狂編」、マーケティング、Jリーグ・クラブマネジメント、サポーターズカルチャー、総合型スポーツクラブ、それぞれの視点からサッカーの舞台裏を探った「戦略編」、生涯スポーツとしてのサッカー論、スポーツ科学からみた選手強化、フーリガン対策を法的な側面から分析する「制度編」の三篇から構成。
サッカーの熱狂とアイデンティティ生成の系譜
Ⅰ 熱狂編
イギリスのサッカー・ラグビーとフーリガニズム
サッカー王国ブラジルの熱狂
韓国のサッカー文化とメディア
Ⅱ 戦略編
マーケティング戦略からみたアジアサッカー
Jリーグ・クラブマネジメントの展開
サポーターズカルチャーの広がり―「コンサドーレ札幌」サポーターの実践から
総合型スポーツクラブへの発展―山形県で挑戦するNPO法人
Ⅲ 制度編
サッカーという文化の「学び」
競技力向上とスポーツ科学―サッカー先進国の事例を中心に
フーリガン規制法をめぐって
競技人口において他のスポーツ種目の追随を許さない大衆スポーツ・サッカーは、時代を追うごとにグローバルな世界を形成し、今日ではスポーツビジネスの寵児として日々流動しつづけている。そして、日韓共催のワールドカップにおいて叙実に示されたように、イベントを通じてナショナルなアイデンティティを醸成し、国際政治上のパワーゲームとしてもその機能を発揮している。しかしその一方で、フットボールのルーツに示されるように、きわめてローカルなアイデンティティ形成の装置として位置づき、地域形成の有用なツールともなっている。
考えてみれば、「たかがスポーツ」の一競技種目にすぎないサッカーが、世界中の人々の心を占領し、揺さぶり、その感情の集団的吐露がエネルギーとなって熱狂空間を生み出す現象は、「競技としてのサッカー」の枠組だけでは説明不可能である。つまり、「文化としてのサッカー」という視点を抜きにしてその熱狂を理解することはできないのである。本書のねらいは、まさに日々世界で展開されつづける熱狂というサッカーをめぐる社会現象をとらえ、その熱狂を生み出す見えざるサッカーの文化的仕組みへの理解にチャレンジすることであった。