出版社内容情報
〈近代的発展〉と〈東洋の理想〉に燃える明治日本を訪れたタタール人の日本滞在記。伊藤博文、大隈重信、東郷提督、頭山満から無名の庶民までを生き生きと描き出し、日本人とは何かを探る。西洋の落日と日本の旭日の中に非西洋・非キリスト教文化圏発達の可能性を見出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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3
明治末期の日本に来日したタタル系ロシア人の滞在記。外国人の日本見聞録は山ほどあるが、「ムスリムから見た日本」の記は見かけない。日露戦争勝利直後で同じアジアが欧州を打ち負かしたことが強調されているが、どうして土地資源が少ない国が勝てたのかを探っているようにも取れる。著者は後にオスマントルコ帝国の汎イスラム主義運動の中心を担う訳だが、そこには日本の大和魂に裏付けされた勤勉な性格と民族精神の影響を見てとれると思うのは言いすぎだろうか。また、日本の文化が如何に特異なのかと、普通の見聞録として呼んでも面白い。2011/04/16
ゆまち
3
1909年に初めて日本を訪れたタタール人ムスリムの見聞記。見るべきは、当時の大アジア主義者と親しく語らっていること。ムスリムとの連携という視座を日本の大アジア主義者に最初に齎したのは、どうやらイブラヒムらしい。ということは、後年の帝国陸軍の防共回廊構想の萌芽のひとつとも言えるのではないだろうか。2010/08/22
可兒
2
おそらくイスラム圏初の日本人論。当時の情勢を反映してかイスラムと日本人にはひいきの引き倒しと特殊論のオンパレードだが、それでもきっちり両者の批判すべきところは批判しているのが新鮮。あと、日本の重鎮たちとかなり会見している2013/04/12
inarix
0
敗戦と革命のために混迷するロシアと和魂洋才の精神で発展しつつある日本。 彼は日本人が持つ、清潔さ、礼儀正しさ、正直さ、道徳心の中に、非西洋・非キリスト教文化圏発達の可能性を垣間見た――。 政治活動のためにロシアから脱出。世界を旅したイスラム系ロシア人(タタール人)が見た西洋の落日と日本の旭日を活写する良書。 2013/07/18