出版社内容情報
母親たちの育児ノイローゼや幼児虐待、子どもたちの不登校やいじめ・自殺問題に、それぞれの立場で真正面から取り組んできた心理カウンセラーと教育ジャーナリストが語り合う「心の器」の広げ方。
【書評再録】
●共同通信全国配信記事(信濃毎日新聞ほか)(1997年3月22日)=早期教育、いじめ、不登校、アダルトチルドレンなどの現象を、対話によってダイナミックに浮き彫りにしていく。現代の心の問題と解決策を、カウンセリングのノウハウも含めて網羅した好著。
●NHK「すくすくネットワーク」評(1999年11月号)=子どもと2人で閉じこもってしまう母子カプセルの危険性を指摘し、母親にとって、子どもにとって、そして男性にとって生きていくうえで何が大切なのかを考えさせてくれるきっかけになる本だと思います。
●ほんコミニケート評(1997年5月号)=心の居場所を求めてさまよう子どもたち、その荒廃の向こうに見え隠れする父親像、親になって初めて自分捜しを始める母親たち---そこに共通する深い孤独感。そんな心のSOSに、静かに答えてくれる一冊です。
●MOM(ジャスコ会員誌)評(1998年3月号)=一生懸命生きるすべての人にエールを送る一冊。
●小5教育技術評(1998年6月号)=家族関係、教育と父親の存在、母親と社会進出のあり方など、大人たちが、今何を考え、何を求めて、何をどう変えていくか、改善していくかを説いている。心理学的に分析された数々の課題について、ともに考えていきたい内容である。
【読者の声】
■女性(36歳)=アダルトチルドレン関係の本を2、3読みましたが、本書が、その総まとめ兼、どうするかの指針の役をしてくれました。ありがとうございました。
【内容紹介】本書「はじめに」より
表題の「愛することと働くこと」という言葉は、精神分析学者のフロイトが、晩年に「人生において大事なことは何か」という質問に答えたものである。そしてそれは、愛することと働くことだけではなく、その2つのバランスが大切であることをも含んでいた。つまり、愛することに支障をきたすほどには働いてはいけないし、愛することだけに没頭して働くことを忘れてもいけない、ということである。
では、私たちはどうだろうか。核家族・夫婦分業が一般的な中で、男性は働くことに没頭して、家族に関わることを避け、女性は愛することに没頭して、社会とのつながりを喪失したまま、その狭い世界に子どもを抱え込んでいる、ということはないだろうか。
いじめが起こるたびに、学校や教育の問題とされがちであるが、果たして私たち大人が、子どもたちにモデルとして示せるほど、仲良く協力的に生きているかどうかは、はなはだ疑問である。給料を渡すことで、父親としての全責任を果たしたつもりになっている男性は多いし、夫の薄給を嘆きながらも、経済的責任を分担しようとしない女性も多い。そのような中で、表面的には幸せそうに見えながら、夫婦関係が悪化している家庭も増えているのである。
戦後50年、高度経済成長をひたすら突っ走る中で、私たちが失ってしまった何か大切なものを毎日の生活の中で取り戻さないかぎり、子どものいじめや自殺、それに虐待の増加などの問題は、本当には解決しないのではないか、と思えてならない。
母親たちの育児ノイローゼや幼児虐待、あるいは子どもたちの不登校やいじめ、自殺などは、一部の特殊な問題と考えられがちである。しかし、この10年間ほど相談室や各地域の母親講座などで母親たちの訴えを聞いていると、もはや、誰にも起こり得る、一般的な問題となっているのである。この現状を、男性がどう考えるのか、それを聞きたかった。
当時、早期教育の取材をきっかけとして親しくなった保坂さんにも、その感想をぜひお聞きしたいと思っていたが、どうせならば、対談という形でじっくりということになり本書ができあがった。
【主要目次】
▲▲第1章・いま、男の子があぶない
父親不在/子どもの荒廃の奥にひそむ父親のストレス
コラム(ハートボイス/描画テスト)
▲▲第2章・思春期が消える
母になってから始まる“自分探し”/チェッカーズと職人文化
コラム(裏校則/先輩・後輩/女の子の男言葉)
▲▲第3章・青いおしっこ症候群
情報を疑う感性/学歴信奉主義からの脱却
コラム(青いおしっこ症候群とマニュアル育児の背景にあるもの/資格の話)
▲▲第4章・「友達ができなくてよかった」という母親
偏差値結婚/昭和一けた世代の母親にみる「もの・お金・勝つこと」/増え続ける「他者否定」/親をキャンセル/親のそのまた親の問題
コラム(否定的なパターンを肯定的なパターンに変える方法/ファミコンという文化/ロボット症候群/母親のようにはなりたくない)
▲▲第5章・母親は社会へ出よう
プライドが邪魔?/ワークシェアリングのすすめ/子育てして初めてわかること--子育ての生活実感こそ大切
コラム(再就職のハードル/ワークシェアリング)
▲▲第6章・楽しかった体験が、子どもを強くする
知育教育に代わるもの/シュタイナー教育
コラム(公文式はなぜ想像力・創造力を枯渇させるか/フレネ教育)
▲▲第7章・女性パワーが支えるフリースクール
観点別評価の罪/手づくりの学校
コラム(観点別評価/東京シューレ/ほっとスクール城山/子連れママ・ウォーク95/アフター5は、お父さん一緒にすごそうよ!)
▲▲第8章・男性は変わり始めたか
夫に期待できない/男性問題の時代/自分の殻をいかに脱ぐか
▲▲第9章・生きることをサポートするカウンセリング
子どもの精神科通い/よいカウンセラーと出会うには/現代カウンセラー事情
コラム(家族の中で起こる転移感情)
▲▲第10章・心の強さは、人によって違う
心の障害は自分を見つめるチャンス/話を聞いてくれるボランティアの必要性
コラム(イギリス・いじめ解決活動--生徒が解決の主体に/ファミリー・サポート・センター)
▲▲第11章・心の居場所を求める子どもたち
90年代に目立つ自発性のなさ/ボーダーラインの人々
コラム(青生舎)
▲▲第12章・どこにも行くところがない
心の避難所/ひとりでも話を聞いてくれる人がいたら/親と違った人生がある/暴力容認の風潮/大逆転の可能性
コラム(合宿で描かれた絵/住宅・都市整備公団との子育て共有スペースに関する研究/子どもの村設立に向けて/マザーシップ)
▲▲付録・節目としての思春期
越境入学と電車通学/多大な影響を与えてくれた父/デモ見物から中学全共闘へ/中学教師との攻防/高校進学を絶たれた“快感”/定時制高校で得たもの/アウトサイダーの終結--人生実験の終わり
内容説明
行動しなければ何も変わらない!家族の問題と学校の問題に真正面から取り組んできた2人が、「それでもあきらめない」で、その解決策を模索し、語り合う。アダルト・チルドレンから一歩踏み出すための、元気の出る対話集。
目次
いま、男の子があぶない
思春期が消える
青いおしっこ症候群
「友達ができなくてよかった」という母親
母親は社会へ出よう
楽しかった体験が、子どもを強くする
女性パワーが支えるフリースクール
男性は変わり始めたか
生きることをサポートするカウンセリング
心の強さは、人によって違う〔ほか〕