出版社内容情報
サイエンス・ライターによるきちんとした取材と理解に基づいて書かれた複雑系入門書。少々難しい現象やモデルも数式を使わずにうまく説明されている。複雑系科学の単なる紹介だけでない鋭い考察と、単純な礼賛ではない独自の見方が光る。
●部分と全体をまたぐ
個体を超えて、まるで一つの生き物のように呼吸する社会や自然……。システムの「部分」と「全体」は決して切り離されたものではない。豊かな細部はめまぐるしく変化し、時として全体が思いもかけない表情を見せる。「知」はそのふるまいを部分と全体をまたぐ「関係」の中に記そうとしている。
近代科学は対象を冷ややかに見つめ、解剖するように分割する方法で自らの知に取り込む作業を長く試みてきた。これらの「科学的方法」は、細部にむかって洗練され、研ぎ澄まされて、社会の機械的な発展を促してきた。
しかし、自然や生命、社会のふるまいは、そのような断片化・細分化した「知識」の単なる集合では捉えがたいことが判明しつつある。
最先端の知が「複雑系」「カオス」「システム」「ファジー」「情報幾何学」といった「全体と関係」への視点を踏まえた独創的な方法論を通じて、この豊かな全体像を捉えようとする果敢な試みを紹介する。
目次
第1章 複雑系とは何か?
第2章 なぜ、いま複雑系なのか?
第3章 「カオス」は複雑さ生成の力学
第4章 複雑系を表現するさまざまな試み
第5章 複雑系としてのわれわれの世界