内容説明
『鯉』、『山椒魚』、『屋根の上のサワン』から出発した井伏文学。―その文体・ユーモア・ナンセンス・かなしみ・はにかみなど、ごく当り前の世界「日常性」をこちら側・向う側から照射した論考。
目次
1章 仮構の向う側の「日常性」―「へんろう宿」から「黒い雨」にいたる構造
2章 人称、視点とナラトロジイ―「武州鉢形成」と「黒い雨」の仕掛け
3章 「山椒魚」の前史周辺―「幽閉」の原景と生涯最初の挫折体験
4章 「山椒魚」よ、どこへ行く―作品は誰のものか、または削除をめぐる比較論
5章 昭和初頭のマルクス主義的体験―創作集「夜ふけと梅の花」、「ざさなみ軍記」の隠れた地平
6章 ユーモアとナンセンスからの出発―「鯉」、「山椒魚」、「屋根の上のサワン」の心象
7章 ユーモア表現とガリヴァー的視点―寺田透「井伏鱒二論」を中心に
8章 年代別にみるユーモアの四型態―特に詩作品や「遙拝隊長」を例に
9章 日常からの疎外と回帰―「ジョン万次郎漂流記」と「漂民宇三郎」
10章 性格悲劇と文体論的異同―作品による井伏鱒二・太宰治対比論
11章 旧知のわずらわしさと「家庭の幸福」―井伏鱒二と太宰治の人間関係
12章 詩論=「おまじない」の半世紀有余―「厄除け詩集」と小説群の相関性
13章 饑堺餓と戦乱の二大モティーフ―「岳麓点描」「鞆ノ津茶会記」論
井伏鱒二・事項昭合年譜