内容説明
魅せられながらも予見できない世界を、自分の孤独と苦難を引き換えに見出そうとする放浪者。人間の根源的な意味を求めて、魂の内奥をさ迷うベケット文学に迫る。
目次
1 放浪の魂
2 迷宮の庭
3 夜のねぐら
4 明日なき真実
5 殺害への意志
6 無目的の存在
7 不在への挑戦
8 悪魔払いの文学
著者等紹介
堀田敏幸[ホッタトシユキ]
フランス文学研究者。1952年、愛知県生れ。愛知学院大学教授、名古屋大学大学院卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yozora
8
「放浪」を軸に、ベケットの小説(戯曲は2本だけ)をいくつかの観点から考察している小論集。この引用がよかった。”ある男が自分の神に誓って、女の人を完全かつ本当に自分のものにするには、彼女を……えーと……腕の中に抱きしめる時でもないし、離れていて、いわば彼女の気持ちを分かちあい、彼女の良いところを感じる時でもないんだ。それはただ、ほとんど沈黙して一人で座りこみ、彼女のもつ力強さを思い描くか、彼女への詩を作るか、いずれにしろ彼の精神の地下埋葬所で、何となく彼女が気をもんでいる事実を感じとる時だけなんだ。”2021/05/19