内容説明
おそれることは、あこがれること―この世の中のこの世ならざる時空を逍遙する未知のなつかしさに満ちた新歌集。
目次
少年ミドリと暗い夏の娘
コラージュ・新世界より
逗留記
パレード・この世をゆくものたち
著者等紹介
佐藤弓生[サトウユミオ]
1964年、石川県生まれ。歌誌「かばん」会員。2001年、角川短歌賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
有理数
23
佐藤弓生、好きです。大変に良かった。今年はこの歌人と出会えて幸せだった、と思います。「夏の朝なんにもあげるものがない、あなた、あたしの名前をあげる」「夕立のあとなまぐさくなる街にきみの傷からかけのぼる虹」「夢を碾く わたしのゆめがどなたかのゆめの地層をなしますように」(「パレード・この世をゆくものたち」)2017/12/29
いやしの本棚
16
読んでいる間幸せだった。まず引用があって、その作品に対するオマージュのような歌が並ぶという構成も好き。こういうのに弱い。冒頭の左川ちか論「少年ミドリと暗い夏の娘」、オブセッションとしての緑色に関する考察がとても興味深かった。勝本みつる『study in green 緑色の研究』の中の、いくつかのアッサンブラージュ、「a field, a home / 避暑」をことに思い出す。少年ミドリが消えていった、その先の風景を見るような…。「走っても走っても涼しいだろう死が死に絶えた午後の夏野は」2017/06/02
テトラ
14
春なれば花ふみしだく蹄もてつね加害者でありたきものを/夏の朝なんにもあげるものがない、あなた、あたしの名前をあげる/ながれゆく窓に販売機のあかり映えて、えらべることがさびしい/ 短歌だけでなく、様々な書籍や音盤からの引用も興味深い歌集。知的好奇心が刺激される心地よさ。歌人の佐藤弓生さんは石川出身。卯辰山の歌が個人的にかなり好き。/風ゆきつもどりつ幌を鳴らすたび四月闌けゆく三月書房/という歌があるけれど、これは京都の三月書房のことなのかな。2015/12/26
葵衣
13
好きな歌人がまた一人増えて嬉しい。/「記憶する ただそれだけをゆるされて頁の中に戦争はあれ」「夢を碾く わたしのゆめがどなたかのゆめの地層をなしますように」「そとはあめ、雨、雨、氷雨、皮膚に皮膚よせて樹木は情を知りそむ」「靴ひもをほどけば星がこぼれだすどれほどあるきつづけたあなた」「ぬばたまのピアノの胸のわが胸に圧しあてられしまま、音、音を」「さくら打ち砕かれてよりあらわれぬ地上に小惑星帯(アステロイドベルト)は」「花に箸ふれさせるとき生きてきた香りほのかにほろにがい骨」2019/04/12
ndj.
12
左川ちかの作品にはじめて触れる。ずっとずっと昔、2003年ごろからこの人のウェブサイトを見ていた。鋭い言葉が小気味よかった。こうして歌集という形で手に取るとまろやかな印象だ。 「無視というやさしい声のこだまする街を通って、いまも通って、」 「蟹みたいみんなしってるかおつきのまるでしらないひとたちの街」 反芻しながら薄っぺらな街を歩く。2018/01/11




