内容説明
大母性を秘めつつ、無垢の童女のように天衣無縫の愛を溢れさせたかの子。無二の理解者でプロデューサーだった一平の筆が切々と追慕する。
目次
生命の娘かの子
妻を懐う
エゲリアとしてのかの子
花嫁かの子
かの子と観世音
きれいな人間
在りし日の妻かの子
執着
鰥の書
解脱〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
18
泣かされた。数ページを捲るごとに、涙が零れるのを憶えた。かの子の伝説とは、あまりも異なる物語がここにあった。 読み進むほど妻に先立たれた一平の気持が痛いほどわかる。生きているとき、いつも仲が良かったとは言えなくとも、先立たれた者には愛しさしか残らない。 その愛しさが、涙に変化するのに違いない。 新婚当初は遊び人だった一平が、やがてかの子一筋に生きるようになったのは、かの子の優しさに負けたのだろう。遊ぶ一平に、かの子は愚痴も言わず泣いていたという。 「かの女と永遠に一緒でありたく思います」と、一平は記す。2022/09/26