内容説明
身を犠牲にしても怪異を蒐集する…そんな忌まわしき仕事にどっぷり引き込まれた、怪談作家・小田イ輔による新刊だ。部屋から聞こえる赤ちゃんの声を家族はねずみだと言うが…「その日の朝」、祠のあった土地に建った家、ある日見知らぬ女が訪ねてきて…「私の家ですが」ほか38編。
目次
お墓がある
よっちゃんの店
些末な問題
お迎え
電話の音
私の家ですが
インチキと霊能力
駐車場
臭い
変わりゆく姿〔ほか〕
著者等紹介
小田イ輔[オダイスケ]
宮城県出身。職を転々としつつ東北地方を彷徨い歩いては、その土地の人間に訊ねて怪談を蒐集している。黒木あるじ推しで『FKB饗宴5』にて初登場(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
134
東北の怪談鬼と異名を持つ著者の怖いけど情深い実話怪談噺コレクションですね。『お祖父ちゃんと刀』その家宝の刀には先祖代々から長男に家長となる印として必ずや痣を残すと言い伝えられて来た。しかし今の代になって姉妹しか生まれて来なくなり、お祖父ちゃんは孫娘への影響に悩んでいた。そこで刀を神棚から下ろし蔵へしまうと孫娘が偶然カッターナイフで傷を負ってしまう。遂に祖父は自ら首を吊り、刀をわしの墓に入れてくれと遺言する。孫娘は祖父が大勢の奴らから滅多切りにされる夢を見て「お祖父ちゃんが守ってくれているのだ」と確信する。2020/08/13
HANA
57
実話怪談集。内容的には昨今の実話怪談に見られる奇妙な話系が多いのであるが、題材はオーソドックスながら、この人語りがだんだんと上手くなっているみたいで各話とも実に読ませる出来。何となく民話調のものも混じっているのは黒木あるじと共通で、この辺東北の地盤みたいなものがあるのかなあ。得体の知れなさが後を引く「笛の音」やどことなく昔話や西洋の妖精譚を思わせる「良い方の娘」等、独特の味のある話もそれに拍車をかけてるみたいだし。それらはどことなくノスタルジアをも漂わせていて、作者独特の世界観を形作っているように思えた。2016/02/24
ラルル
29
面白かったです。短編それぞれ良い味のある話ばかり。シリーズバラバラの順番で読んでいたので今回続編を書かれていた話が未読。やっちまった2016/07/25
澤水月
23
一番驚いたのが宮城でだけ手術室を「ザール」と呼ぶこと。その註が変な位置にあり途中まで間わからないからなおさら怖い。インチキと霊能力、お祓いしてますからは霊能者あれこれで興味ふかい。東北言葉?濃い良い方の娘も◯。「すっかりとして」など独特の用語が黒木あるじさんぽい。落下と思春期も後で中身思い出せるいい話2015/10/31
pulpo8
20
久々にいい怪談を読んでとても嬉しかった!小田イ輔、やっぱりいいなぁ。どの話もいい感じだが、多分それは描写や取り上げている細部が実に程よいから。微妙に予想とずれていく展開も心地よく、まさに「実話」を読んでいる気になれる。雰囲気が凄くあるのだよなぁ。黒木あるじに嵌った頃の興奮を思い出した。「インチキと霊能力者」「大丈夫っす」これは嫌。「落下と思春期」いや~印象的だわ。これがベストかな。「信じた方がいいですよ」「坊主顔」「知らせ」これには寒気が。「お祖父ちゃんと刀」「良い方の娘」ゾクゾク。小田イ輔、集めよ。2017/10/06