内容説明
“参勤交代で他の大名に会いそうなら逃げよ”“将軍からのねぎらいの言葉にまであった格差”“将軍になるはずが越前松平家の数奇な運命”…お殿さまも楽ではない。幕府による巧みな大名統制戦略。
目次
第1章 石高でみる格差(「石高でみる格差」の基本―表高と実高;4500石なのに10万石待遇 喜連川家の格付けにみる幕府の思惑 ほか)
第2章 将軍との関係でみる格差(「将軍との関係でみる格差」の基本―親藩・譜代・外様;御三家は御三卿に乗っ取られた?将軍を継げる家で起きた異変 ほか)
第3章 江戸城でみる格差(「江戸城でみる格差」の基本―日本最大の儀礼空間;駕籠から降りるか乗ったままか 格差で変わった登城風景 ほか)
第4章 江戸藩邸でみる格差(「江戸藩邸でみる格差」の基本―すべての大名が集う町;地元の石高が江戸藩邸の広さを決めた ほか)
第5章 参勤交代でみる格差(「参勤交代でみる格差」の基本―全国に広がる大名の序列;幕府の命も無視してド派手に プライドがかかっていた参勤交代 ほか)
著者等紹介
安藤優一郎[アンドウユウイチロウ]
歴史家、文学博士(早稲田大学)。江戸をテーマに執筆・講演活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
99
約260年続いた徳川幕藩体制。いかに”泰平の世”を出現させたか?鎖国により内政に専念できた幸運。各地の領国に藩主として配された三百諸侯に対し、石高、官位、控部屋などで巧みな格差社会を演出。将軍への忠誠を競わされたのが良くわかる。親藩・譜代・外様までは習ったが、その中にも複雑な格差が。我が故郷の殿様、佐竹義宣公。関ヶ原での日和見的態度により常陸54万石から秋田20万石に左遷。それでも島津・毛利・伊達家など全国に僅か18家の「国持大名」の格は保つ。家康も自らの権威のため、戦国以前からの名門には配慮したという。2021/04/29
パトラッシュ
72
武家政権とされている江戸幕府だが、実質的には宮廷と化していた事情を明らかにする。少しでも他者より上にありたい、面目を保ちたい人間の本能を利用して、武士という名の貴族たちを格付けすることで幕府への忠誠を競わせていたのだ。将軍(国王)を頂点に地方大名(諸侯)から旗本・御家人(宮廷官僚)まで様々な貴顕がひしめく江戸城内で、石高から官位や儀礼、殿席や装束に至るまで細かな格差を設けることで思うがままに操る政治技術は見事と言うしかない。鎌倉・室町期のような粛清や内乱を起こさずに統治を行う、政治心理学の教科書といえる。2021/03/08
しげ
68
「格差」と言う言葉は好きでは有りませんが江戸幕府のそれは大名達を統制する為に用いた家格を基準とした明確な序列付けだと理解出来ました。赤穂浪士仇討ちの原因も指南役の吉良上野介が清和源氏足利家支流と知れば高飛車な理由(高家)と勝手に納得します。何でも有りの現代ですが忠義や礼節…見習わ無ければならない所も沢山と感じました。2023/10/26
きみたけ
68
著者は、江戸をテーマに執筆・講演活動を展開している歴史家で文学博士の安藤優一郎氏。三百諸侯といわれた江戸時代の大名たちは石高以外にも様々な基準で格付けされていたという。泰平の世を実現した幕府の巧妙な仕掛けにより大名がどのように格付けされたかを「石高」「将軍との関係」「江戸城」「江戸藩邸」「参勤交代」の5つの視点から明らかにした一冊。個人的には、江戸城内の御殿における視覚化された大名格差の詳細内容に興味を持ちました。大名行列同士がすれ違う時の作法も面白かったです。2023/10/07
金吾
30
知らない話もあり、面白かったです。面子と儀礼で大変だなあと思いました。3章4章が良かったです。2023/04/07