内容説明
インフラから読み解く武将たちの強さの秘密。織田信長は臨時に造られる陣城造りの名手だった、鉱山開発を援助して銀を軍事活用した毛利元就、山国出身の武田信玄が港湾整備を成功できた理由など、土木工事を通じて見る新しい戦国武将たちの姿。
目次
第1部 経済発展を支えたインフラ事業(織田信長×安土城城下町―巨大経済圏の誕生を支えた織田信長の土木工事;武田信玄×金山―誤解されがちな武田家と金山開発の関係に迫る;上杉謙信×直江津―特産品を出荷する港湾都市の整備に着手 ほか)
第2部 土木工事で戦に備える(織田信長×陣城―前線に造った臨時の城で敵をじわじわ攻め落とす;織田信長×石山本願寺―一向宗の建築技術が織田信長を苦しめ続けた;武田信玄×港湾拠点―ゼロから水軍をつくった信玄の港湾整備の秘訣 ほか)
第3部 領国経営の基盤を強化する(武田信玄×信玄堤―盛られ過ぎた信玄の治水事業の実態;北条氏×小田原―北条5代の土木工事で支配体制を盤石に;朝倉氏×一乗谷―足利将軍邸に範をとった時代を象徴した城下町 ほか)
著者等紹介
豊田隆雄[トヨダタカオ]
福島県生まれ。現職の高校教師。埼玉大学大学院修士課程修了。学生時代の専攻は東アジア研究。学校では日本史の他、世界史、地理など社会科全般を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
49
戦国大名と土木工事。戦国大名は戦ばかりしていたわけではない。究極彼らの目的は自己の増殖で行き着くところが天下統一であったわけだが、そのためには軍事的に、天災などからの地域の安全確保、農産物等の増産あるいは交易による利益の確保等の経済問題など、国を維持するために必要なことがあった。それらをなすために必要だったことが都市建設であり、即ち各種の土木工事であった。何のために各地に残る戦国大名の遺産はなされたのか。当然の結論だが知らない土地に同じようなものが残ることに感銘。2024/06/08
kei-zu
29
仕事柄、「公共工事」と聞くと反応してしまいます。本書の構成は大きく3つに別れ、「インフラ整備」「土木工事」「経営基盤強化」の分野ごと、様々なエピソードを紹介。 学生時代は歴史音痴に地理音痴でしたが、今の仕事で全国の方々と交流させていただき、興味も湧いて来たところです。 そのような読者に、初心者向けの執筆が読みやすい。2023/01/15
yyrn
26
教科書だけでは伝わらない日本史の魅力を生徒たちにもっと知ってもらいたいと、高校教師の著者が生徒たちに人気の高い戦国武将らを題材に、単に戦が強かっただけでなく、領地・領民を治めるためにそれぞれの地で、その特性を生かして様々なインフラ整備(港、道路、治水、城下町、鉱山開発、森林伐採と植林、新田開発等々)を戦の合間に手掛けてきたことを要約して教えてくれる本。良い面ばかりを紹介しているようにも思えるが、純粋培養中?の生徒たちにはちょうどよいのかも。人生の裏を知るのは、大人になってからでも遅くはないしw。2022/10/31
鯖
18
大量に参考文献にあげた昨今の新書や専門書を高校の日本史の先生が噛み砕き「加藤清正×新田開発」「信玄×信玄堤」といった具合で28講にまとめた本。土木工事のみならずインフラや経済基盤にまで触れられており、私がとっても好きなやつ。謙信が青苧(繊維)を都に運ぶ港湾税として年間60億ゲットしてたことや朝鮮出兵の際、突貫工事で造られ20万もの人々が全国から集まったものの関ヶ原後に解体された名護屋城の末路、火山のない明に火薬の原料である硫黄を輸出していた西国大名たちなどどれもこれも面白かった。2021/03/03
わたお
13
戦国の世で生き残るためには、戦に強いだけではダメで、国を富ませるために治水をしたり鉱山を開発したり街道を整備したりと、裏では地道な国造りをしていた。いろんな武将のいろんな土木工事が紹介されて面白かった。やっぱり武田信玄の国造りは面白いですね。2021/06/30