内容説明
眠ることで世界の神秘を見つけようとする男を描く表題作「閉ざされた扉」をはじめ、ネコ科動物の絵を蒐集する主人公が狂気にはまり込んでいく様を描く「サンテリセス」、失職した老人と不思議な少女とが出会う「アナ・マリア」、厳格で気位の高い独身女性がはからずも野良犬と意気投合する「散歩」など、日常からつまはじきにされた者たちの世界を優れた洞察力で描き出す著者の全短編。
著者等紹介
ドノソ,ホセ[ドノソ,ホセ] [Donoso,Jos´e]
1924年、チリのサンティアゴのブルジョア家庭に生まれる。1990年には国民文学賞を受けた。1996年、サンティアゴにて没
寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年、愛知県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、早稲田大学社会科学総合学術院教授。専攻、現代ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
46
全短篇とは言え収録されているのは僅か14作。しかし、いずれもが強い印象を残すバラエティに富んだ作品ばかりで、ドノソという作家の無比の力を存分に味わうことが出来る。オラシオ・カステジャーノス・モヤの解説(序文)も詳細でありながら平易で理解しやすい。非常に充実の短篇集であった。お気に入りは表題作の「閉ざされた扉」「盛大なお祝い」「シロンボ」「二通の手紙」「アナ・マリア」の五作。『別荘』は友人からもらって長年積んでいるので早く読まないと。2023/09/20
rinakko
5
〈全短編〉がそのまま初期短篇集(長篇から短篇小説には戻らなかったから)と。面白く読んだのは、表題作と「シロンボ」「チャールストン」(語り手を含む男3人ともク◯と思ったけどw)、「散歩」「サンテリセス」。2023/10/16
メルキド出版
4
「休暇」2023/11/09
蛙坂須美(アサカスミ)
4
ドノソ短篇の秘かなファンだったので、この翻訳はうれしかった。ぜんたいに社会的、経済的な尺度では「小さい人びと」と見做されるだろう登場人物が隠し持った暗いオブセッションを、ねちっこいリアリズムと露骨すぎない寓話性が同居した筆致で描いている。何度読んでも素晴らしい「閉ざされた扉」(既訳の邦題は「閉ざされたドア」)の他にも「シロンボ」「盛大なお祝い」「チャールストン」「アナ・マリア」など舌を巻く佳品が多い。最大瞬間風速はやはり末尾を飾る「サンテリセス」だろうか。未訳の長篇と娘さんの書いた暴露本もお願いします。2023/09/27
ぎじぇるも
2
ドノソの比較的リアリティよりの文学と思いきや文章の妙でマジックを感じる。マジックリアリズムは別に狂気や魔法や神話の代名詞ではないことを証明している。視点や尺度により関係性や好悪の変化があらわされている作品ばかり。特に好きなのは散歩。 主人公の男の子と死んだ母の代わりになって欲しい叔母さんの間柄の話と思いきや男の子を置いて叔母さんが人生を走る話になった。感動だよねこんな作家。2024/03/16