内容説明
19世紀のフランス文壇において、自由を求め、権威に縛られることなく自立した芸術家として数々の名作を遺したギィ・ド・モーパッサン(1850‐1893)。母親から芸術家になるべく育てられた青年時代、フロベールとの邂逅から作家として名を馳せたのち43歳で夭折するまで、短くも激しい生涯を駆け抜けた作家の人生を稀代の伝記作家が描く。
目次
逃げ出した仔馬
詩と現実
二人の師
戦争
役人
グルヌイエール
ロワイヤル通りからグルネル通りへ
脂肪の塊
“おやじ”の死
『女の一生』、そして人生
ベラミ
サロンの空気、沖の空気
オルラ
去り行くエルヴェ
山の向こう側
大詰め
生きた死者
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ] [Troyat,Henri]
1911年モスクワ生まれのロシア系フランス人作家。1935年に処女小説『ほの明かり』を発表して以来、2007年に九十五歳で没するまで精力的に小説、伝記、エッセイ等を発表した。日本でも多数の作品が翻訳されている
足立和彦[アダチカズヒコ]
1976年、京都府に生まれる。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、パリ第四大学博士課程修了。現在、名城大学法学部准教授。専門は十九世紀フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
108
モーパッサンについては以前読んだ詳細な伝記が油絵の大作ならば、トロワイヤはスケッチブックの水彩画のイメージで『女帝エカテリーナ』などに比べ物足りない部分が残る。それでも疾風の如くフランス文壇を駆け抜け、今日も読者が絶えない数々の名作を残した文豪の生涯を簡潔に描き出す筆は相変わらず力強い。作家として成功する一方で両親や弟家族の面倒がのしかかり、旅を重ねながら乱倫のため死に至る病を患う姿は、小説の主人公より現実離れしている。いくら苦しくても思うがままに生きることを許された、幸福な文学者が鮮やかに浮かび上がる。2023/05/31
星落秋風五丈原
26
恋多き息子の性格は、明らかに父親譲りである。父ギュスターヴ・モーパッサンはロール・ル・ポワトヴァンに熱烈に求婚していたにも関わらず、職探しの傍ら情事に耽る。だから、ある時サーカスに父と知らない女性と行った息子もわかっている。「僕は作文で一等賞でした。X夫人はご褒美にパパと一緒にサーカスに連れていってくれました。彼女はパパにもご褒美をあげているようだったけれど、何のご褒美かは分かりませんでした。」いくら人物描写に優れていても、9歳でご褒美の中身までわかったら末恐ろしい。2023/05/14
ラウリスタ~
12
2023年刊。原書はロシア系フランス人の小説家、伝記作家による1989年の作、訳者はモーパッサン研究者の足立和彦。小説家による伝記らしい、読者を惹きつける伝記。それもモーパッサンの生涯が、一面ではあまりにも下品で、他方では特にその晩年があまりにも悲劇的だからだろう。同時代のゾラらと比較すると、モーパッサンは一応貴族で、ユーモアのセンスに富み(ややいじめっ子気質の悪ふざけ、セクハラ感は否めないが)、社交界・サロンの寵児(短い生涯でフロベールから若きプルーストに至るまで関わりがある)、肉体派で並はずれた性豪。2023/03/29
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