内容説明
世界を複数化する憑在論。自己と他者の境界を撹乱する「語り」に潜む亡霊、時間と空間を混線させる「間テクスト性」に潜む亡霊―“亡霊”はそこにいる―主体・意味・記号の一義性が、亡霊に取り憑かれたときに消滅する。『源氏物語』『平家物語』をはじめとする日本古典の数々を緻密に読み解き、テクストにまったく新しい時空と意味を導き入れる“亡霊論的転回”の試み。
目次
“亡霊”に取り憑かれるエクリチュール、あるいは死者との親密圏を生成する―『曾我物語』、宮部みゆき『孤宿の人』、井上ひさし『父と暮せば』
第1部 ナラティヴの亡霊(亡霊の時間/未来からの記憶、あるいは“今・ここ”が散種される―『義経記』、謡曲“二人静”、『伊勢物語』;語る亡霊のスキャンダル、あるいは“亡霊機械”が“語り”を流動化する―謡曲“鵺”、『平家物語』「〓」、和泉式部;“不在の原因”としての平家一門、あるいは現実界に“亡霊”を登録する―謡曲“八島”、那須与一、『平家物語』成立伝承;“死者/動物”への生成変化、あるいは“狩猟機械”が起動する―謡曲“善知鳥”、カムイ・ユカラ、和歌のレトリック;“カタリ”の亡霊論(hantologie)的転回、あるいは「話法」による“亡霊”への生成変化―語り物文藝、『平家物語』「小教訓」、自由間接話法)
第2部 インターテクスチュアリティの亡霊(見えない“桜”への生成変化、あるいはテクストが“亡霊化”する―『平家物語』「忠度都落」「忠度最期」、謡曲“忠度”;能を観る“紫式部”、あるいは「海人の塩焼く」言説が混線する―『平家物語』「福原落」、『源氏物語』『太平記』、謡曲“須磨源氏”“敦盛”;『平家物語』を読む“紫式部”、あるいは“不在の原因”としての平将門―「福原」、「須磨・明石」、「都」;混線する“重衡物語”のことば、あるいはインターテクスチュアリティが“亡霊”を産出する―謡曲“重衡”“千手重衡”、『和韓朗詠集』古注釈、『伊勢物語』;小宰相と小野小町との絆、あるいは男たちの“欲望”を逆なでする―『平家物語』「小宰相身投」、室町時代物語、謡曲“卒塔婆小町”;“貴種流離譚”に潜ディアスポラ性、あるいは女性達の彷徨が可能性を拓く―謡曲“隅田川”、御伽草子、『伊勢物語』;『源氏物語』を引用する『平家物語』/『平家物語』を引用する『源氏物語』、あるいは新しい“読み”の可能性が拓かれる―「維盛と光源氏」、「高倉帝と桐壺帝」)
著者等紹介
高木信[タカギマコト]
1963年、滋賀県生まれ。名古屋大学大学院博士後期課程満期退学。1996年に名古屋大学より博士(文学)を取得。専門は、軍記物語、日本語古典テクスト分析、ジェンダー分析、国語教育。学校法人東海学園東海中学・高等学校教諭を経て、2008年より相模女子大学教員。2020年現在、相模女子大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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