内容説明
離散的な遠心力を備える「戦争機械」の概念、進化論的な国家観を覆した「国家に抗する社会」という定理をはじめ、クラストルが遺した思想はいかなる現代的意義をもつのだろうか?訣別の予感の下でヤノマミ滞在を綴った「最後の砦」、未開社会における政治権力の構造を巧みに分析した「未開人戦士の不幸」ほか、人類学が真に政治的なものになるための一二篇の論考を収録。
目次
最後の砦
ある野生の民族誌
クルーズの見せ場
民族文化抹殺について
南アメリカ・インディオの神話と儀礼
未開社会における権力の問題
自由、災難、名付けえぬもの
未開経済
啓蒙ふたたび
マルクス主義者とその人類学
暴力の考古学―未開社会における戦争
未開人戦士の不幸
著者等紹介
クラストル,ピエール[クラストル,ピエール] [Clastre,Pierre]
1934年、パリに生まれる。1977年、自動車事故によりロゼールに没する。フランスの文化人類学者・民族学者
原毅彦[ハラタケヒコ]
1953年、東京都に生まれる。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。現在、立命館大学国際関係学部教員。専攻は、文化人類学、南アメリカ地域研究、日本民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
8
帝国主義国家の植民地拡大に伴い発展した人類学が文化のみならず政治を扱うには、未開社会から国家を捉え直す必要があるのだろう。未開社会に文明社会と同等だが異質な思考を認めた構造主義を批判した著者は、未開社会を国家に向かいつつも国家に抗う社会と捉えた。この社会が戦争を物資の収奪や領土拡大のためでなく、権力の未分化状態の維持のために行うのは、分化と共に国家が出現するからだという。死なる区分と求心的権力をもたらす戦士に注目する著者は、戦士の死と引き換えに社会が未分化な生に回復するという捉え方に未開社会の政治を見る。2024/02/09