内容説明
ギリシアの彫像や、ダヴィッド、ドラクロワ、マネ、モローらの絵画のイメージから文学作品を読み解くことで、近代におけるジェンダー規範を照射する。“女/男らしさ”とは何か?
目次
第1章 天才的な女性詩人の悲劇―スタール夫人『コリンヌ』(女の登場人物のポルトレ;造形芸術の象徴的意味;コリンヌのギャラリー)
第2章 「宿命の女」像―バルザック『砂漠の情熱』から『従妹ベット』まで(「宿命の女」と絵画;「宿命の女」のアレゴリー―女豹ミニョンヌ;『姉妹ペット』における「宿命の女」像)
第3章 危険な「ヴィーナス」―ゾラ『ナナ』(「金髪のヴィーナス」;ナナの獣性;マネによる「夏の娼婦」像とナナ;空間を浸蝕するナナ)
第4章 モードの女王―ゾラ『獲物の分け前』(「パリ人形」としてのルネ;ルネとウジェニー皇后;「操り人形」としてのルネ;部屋と女の衣装、裸体)
第5章 「男らしさ」と両性具有(「男らしさ」の定義;ロマン主義文学における両性具有的存在;一九世紀後半の文学における両性具有的存在)
著者等紹介
村田京子[ムラタキョウコ]
京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。文学博士(パリ第七大学)。現在、大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授。専攻、一九世紀フランス文学・ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nranjen
4
題名のとおり、論じられているのは主に19世紀フランスの小説におけるジェンダー、スタール夫人とバルザック、エミール・ゾラの作品で、作品の写真も豊富に掲載されていてとても嬉しいし楽しい。そもそも19世紀の幕開けのナポレオンの登場によって、悪名高きナポレオン民法が制定され、女性のあらゆる権利が奪われ規制されたことから、その後のフランス社会での家父長制に基づく男女の役割分担が確立されたことを思うと、今の男女差別が確立された時代でもあると思う。その現れが分析によって鮮やかな形で明らかにされている。2021/07/21