出版社内容情報
メキシコの先住民社会を取り巻く抑圧的な規範のなかで生きる落伍者や弱者たち。
彼らに差す一筋の光を丹念に描きながら、伝統的なモラルそのものを批判した、「先住民文学」の新しい地平を切り開く、民族誌的ファンタジー。
ソル・ケー・モオ[ソル ケー モオ]
著・文・その他
吉田栄人[ヨシダシゲト]
翻訳
内容説明
メキシコの先住民社会を取り巻く抑圧的な規範のなかで生きる落伍者や弱者たち。彼らに差す一筋の光を丹念に描きながら、伝統的なモラルそのものを批判した、「先住民文学」の新しい地平を切り開く、民族誌的ファンタジー。
著者等紹介
モオ,ソル・ケー[モオ,ソルケー] [Moo,Sol Ceh]
1968年、メキシコ国ユカタン州カロットムル村に生まれる。作家。2007年に「闘牛士」、2010年に「占い師の死」でユカタン大学が主催する文学コンクールでマヤ語部門最優秀賞を受賞。2014年には『女であるだけで』によってメキシコ教育省のネサワルコヨトル文学賞を受賞
吉田栄人[ヨシダシゲト]
1960年、熊本県天草市(現在)に生まれる。広島大学大学院社会科学研究科博士後期課程中途退学。現在、東北大学大学院国際文化研究科准教授。専攻、ラテンアメリカ民族学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Michio Arai
12
メキシコ先住民マヤ族の作者によるマヤ語の小説。勿論日本語訳ですが。 森に食われた悪童の歌声が森にこだまする話やお迎えにくる白い蝶、樹木、鹿、風、酒など森羅万象に霊性や魔性を見るマヤ族の風習が垣間見えて何とも不思議で良い。気候風土が異なるからか日本の土俗信仰とは一味違う。それに聖書やカトリック的、スペイン的な風習が混ざっている。寓話風であったり、風刺的、批判的であったりするところ、今日の女性作家の視点から表現したがっているのがよくわかる。こういうジャンルを先住民文学というらしいが、こういうのもっと読みたい。2019/01/19
刳森伸一
3
メキシコ先住民のマヤ族出身の作家による短篇・中篇小説集。神話的世界やメキシコ社会を女性側の視点で批判的に描いた作品が多い。そこで描かれる伝統的な社会は極度に男尊女卑であり、ダメな男と抑圧的な社会で必死に生きる女とのコントラストが際立っている。しかし、ダメな男の多くが酒(アルコール)で身を崩しており、伝統的な社会を悪い方に壊したのも、伝統的な社会に対する批判的な目も持ちえたのも西欧からであるというアイロニーがあり、単純に伝統的な社会を否定するものではない。2020/02/27
Yoko Kakutani 角谷洋子/K
2
先住民族、マヤの社会を描いたソル・ケー・モオの短篇集。シンプルな語り口なので非常に読みやすい。特に短い作品が良く焦点があっていて、切れ味鋭いと感じました。男尊女卑の社会で必死にもがく女性像が鮮烈。作中で描かれるマヤの土俗的な習慣にも好奇心がそそられます。 誰しもが厳しい社会で、危うい均衡の上に生きている、それぞれの生が禁欲的なタッチで綴られていて、気がつくと頁をめくる手が止まらなかったです。2020/03/31