出版社内容情報
日本人はなぜ自然が好きなのか。近代的自然観や、百姓の体験に根ざした自然への見方から日本人独特の自然観を明らかにし、新しい自然へのアプローチを提唱する。
内容説明
日本人は、なぜ自然が好きなのか?自然を外から、科学的に見るだけでなく自分の体験を呼び起こしながら、内からのまなざしで見る―伝統を大切にしつつも、まったく新しい自然へのアプローチ。
目次
第1章 自然はどう見えているのか
第2章 生きものへのまなざし
第3章 「自然」という言葉の不思議さ
第4章 自然を守るという発想の混乱
第5章 自然の見方、感じ方
第6章 自然の新しい見方は始まっている
著者等紹介
宇根豊[ウネユタカ]
1950年長崎県生まれ。1978年福岡県農業改良普及員として「減農薬運動」を提唱。「虫見板」を普及し、「ただの虫」を発見。1989年福岡県二丈町(現糸島市)で新規参入就農。2000年福岡県を退職。2001年NPO農と自然の研究所を仲間と設立、代表理事。農学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
future4227
39
2020年中学入試で論説文の出題No.1の本。もともとナチュラルという意味しか持たなかった自然という言葉を、明治以降ネイチャーという英語の訳語としてしまったことで、日本人は2種類の自然を使い分けるようになったというのは興味深い。田んぼは人工的に作られたものだが、果たして自然なのか?私達が自然と言う時、どの状態を自然と感じているのか?日本人の感性や農耕民族としての歴史、宗教観など多角的な面から考察している。葉=齒、芽=目、花=鼻、茎=歯茎、実=身、実実=耳、穂穂=頬、殻=体、根=心根・性根。気づかなかった!2021/11/26
大先生
11
再読。【西洋の中世以降の自然観(キリスト教)では、自然は人間のために造られたものであり、人間と自然は別物。それ故、人間は自然を外から見てきた。従来の日本人の自然観では、人間も自然も天地の一部として、内側から見てきた。原生自然だろうが、田んぼのように人間の手が加わった自然だろうが、どちらも生きものが暮らす大切な自然。田んぼにはたくさんの生きものが暮らしている。百姓は米を作っているだけでなく、たくさんの生きものが暮らす田んぼを作っているのだ】私は大自然の中で育ったのに、自然の楽しさを大人になって知りました。2024/11/04
乱読家 護る会支持!
8
毎朝、お空を見て、お空と会話している僕(夜はお月様や、オリオン座さんと対話)。 本書によると日本人の自然観は、内側で自然と対話する事にあるらしい。それは、自分の外側に広がる自然との対話でもあるし、自分の身体(自然)との対話でもある。それは、全てのものに神が宿るという日本人の宗教観と関わっている。2019/11/23
Yoshie S
7
ちくまプリマー新書の紙の厚みがしっくり。宇根さんの柔らかい書きかたもゆったりとした時間を感じられる。2020/03/13
遥
6
宇根豊さん著の「日本人にとって自然とはなにか」を読み終えました。新しい考え方に触れることができて、ほかの人に勧めたくなるような本でした。現代の人々が忘れているような自然への視点が語られていたからです。やはり宇根さんの自然観と文章が好きだと再認識しました。そして、いくつかの過去の文献が紹介されていたのですが、受け継がれてきた精神を知るうえで、古文を習うことの重要性を実感しました。新しい発見がたくさんあり、自然や環境について考えが深まりました。この本で宇根さんが一番のテーマとしていたのは「まなざし」です。2021/04/29