内容説明
21世紀になり新たに勃興したモノやノン・ヒューマンを巡るさまざまな思索や、人類学の存在論的転回とも深く絡み合いながら、諸学問の歴史にまつわる知見の膨大な蓄積を背景に、セールの思想の画期的な新展開が、ここに語られる。
目次
序章 三つの世界旅行
第1章 われらがトーテミストの系譜
第2章 魂は皆のために、衣服はおのおののために
第3章 私、モナド、アナロジスト
第4章 自然と文化の婚姻
終章 幹
著者等紹介
セール,ミシェル[セール,ミシェル] [Serres,Michel]
1930年、南フランスのアジャンに生まれる。哲学者、科学史家、文人。パリ第一大学、スタンフォード大学の教授を長く勤め、1990年にアカデミー・フランセーズ会員にも選出された。現在も旺盛な執筆活動を行っており、その思想の今日性が二一世紀になって世界的に再評価されつつある
清水高志[シミズタカシ]
東洋大学総合情報学部総合情報学科准教授(専攻、哲学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
27
分類の面白さは、物事に白黒をつけたり、人々の力関係を示したりすることではなく、思考や世界の在り様のパターンを見つけ、それらにふとした関連を見つけることにある。そういう意味で、デスコラの、アニミズム、ナチュラリズム、トーテミズム、アナロジズムという四つの世界像のモデルを手引きに分類・検討を行い、それらに関連以上のものを見つけ出すセールの手際は、まるで立体的・重層的な三次元のパズルを、楽しそうにゆっくりと、一つの幹のような完成図へはめ込んでいくよう。そしてさらにそれは、別の立体パズルにも繋がっているのだ。2017/04/16
roughfractus02
7
自然と人間の対称的関係を分類したフィリップ・デスコラの4類型(アニミズム、ナチュラリズム、トーテミズム、アナロジズム)は人間と自然を分断したシャーマニズム系統の非対称的自然観を採用し、自然を対象化して操作する近代的自然観とは異なる。この4類型に呼応する著者は、客観的法則によってよって形成された現代の「世界」から排除された大地を、物語によって対象化できない位相として掘り起こす。本書の旅は、著者自らに刻み込まれた「世界」にこれら位相を見出し、自らを人間からヒト生命体へと変容させる文体的試み(エセー)でもある。2024/09/15
吟遊
7
現代フランス思想だなあ・・・と思う。ドゥルーズ/ガタリほどではないにせよ、自分独自の文体が大好きなのがわかる。セールは、いつもそうなのか知らないが、学術・論文調よりは、エッセイ調。アニミズム、トーテミズム、ナチュラリズムといった四分類が四つの章とともにテーマになっていながら、語っていることは自由自在。(笑)2017/01/11
渡邊利道
3
人間の思考(世界との関係性)を、〈一と多〉〈精神と自然〉の関係の四つの相としてトーテミズム・アニミズム・アナロジズム・ナチュラリズムに分類し、さまざまな学問・芸術・科学をその横断的な推移・変化の歴史として記述していく濃厚な長篇エッセイ。文化や正義を愛するものは自然科学が嫌いだという文句に笑ってしまった。ライプニッツとベルクソンがすごく大きくフィーチャーされていて、あまり詳しくないので理解がスッキリいったとはいえないが、分析哲学についてスコラ的な分類の論理で語っているところとかもやっぱり笑ってしまった。2016/11/11
☆☆☆☆☆☆☆
1
デスコラの四分類モデルにインスパイアされて書かれた哲学エッセイ。哲学者が人類学の概念をどう流用するかのという点から興味深かった。個人的にはデスコラって図式的すぎて好きじゃないんだけど、それをあえて「幹」を見出すために読み込むってのは目から鱗でした。ただ、ある程度まで人類学と哲学の議論に通じてないと読みにくいかも。2017/02/24