内容説明
パリを彷徨する一人の青年の日常を細部にいたるまで活写しながら、60年代のフランスにただよう“空気”と、青年の“孤独”を描く。言語遊戯の奇才による、カフカ的世界観を彷彿させる初期の秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
16
「おまえ」は大学入学試験の朝、目覚まし時計が鳴るままに任せ起きようとしない。試験を受けず、外に出ることも拒絶する。そして人生におけるあらゆる前進を突如停止させる。ここには存在論的に虚ろな魂がある。それは眠りつつも眼を覚まし、何も意識せずに自らの意識を意識する。行動に対立する思索すらを越えた何かがここにある。これは一般的に意味されるような小説ではない。本作は『代書人バートルビー』から着想を得たそうだ。しかし『代書人バートルビー』にはドラマがあったが、本作にはそれがない。それをどう受け止めるかは人それぞれか。2017/01/26
qoop
8
欲望と自意識の時代に自我を最小限に留め、哲学的なミニマルライフを送る男。生命活動から意味/意義をそぎ落とし、夢も見ず眠るように死んだように、皮膚の内外しか意識せず、ただ生きる。そんな〈おまえ〉を描写した本作は、苛だたしい世界を無視して認めない、ラディカルな抵抗を綴った散文詩である。無力で無気力で無関心なその姿は、最終的に世界から活力を奪い、衰えさせ、枯死させるだろう。半端なニヒリズムであり単なる甘えであるがしかし、そのひりつくような皮膚感覚は受け止めよう。それが60年代パリのリアルだったのだろうか、と。2017/02/25
ゐ こんかにぺ
2
輪廻2019/09/16
azusa
2
可能な限り無関心にただ存在しようとする男の話 頭の中にぼんやりとした膜が出来ていく様な浮遊感 2017/03/09
ゐ こんかにぺ
1
このぐだぐだ、現実が現実から離れていって、意識が内面にひたすら向かっていく様子、かなり好きです2017/05/17