内容説明
若さゆえ、無分別な結婚をし、日々絶望していたジュリー。二人の男と出会い、真の愛に目覚める彼女に、数々の偶然とおそろしい不幸が襲いかかる…。少女から母親へ、波乱にみちた奇想天外な女の人生が六部構成で壮大に語られる表題作ほか、謎の女と大粒のダイヤをめぐるミステリアスな「家庭の平和」の二篇。
著者等紹介
芳川泰久[ヨシカワヤスヒサ]
1951年、埼玉県に生まれる。早稲田大学卒業、同大学大学院後期博士課程修了。現在、早稲田大学文学学術院教授。専攻、フランス文学
佐野栄一[サノエイイチ]
1951年、北海道に生まれる。青山学院大学卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。現在、流通経済大学教授。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
124
『三十女』ジュリーの若い娘時代から小さい孫がいる50歳くらいまでの話。バルザックは結婚して数年間の彼女を貞淑だと言っているが、果たしてそうだろうか? うわべだけで男にのぼせてしまう若い女性に見合った人生だったように思う。むしろ、娘のエレーヌの人生のほうがおもしろそうだ。そして、夫のずいぶんな変わりようには、作者が人物像を途中で勘違いしてしまったのかと感じるほど。『家庭の平和』浮気も本気も入り乱れ、結婚相手やパートナーが交差し、まとまるようにまとまる。バルザックは長編より短編の名手かも。2018/02/13
NAO
60
「三十女」三十にもなれば女性としての華やかな時代はすでに過ぎ、社交界を牛耳っている一部の貴婦人たちを除いては三十女は誰からも見向かれることなどなかった時代、若い頃の激しい恋に破れた女主人公が、三十過ぎて新しい恋人を得、その恋に溺れてゆく。愛は冷めてしまっていながらも夫を支え続け夫の無軌道ぶりを諦観を持って眺めていた貞淑の鏡ともいえた妻の恋人を得てからの開き直りっぷりがすさまじい。恋人シャルル・ド・ヴァンドネスは、『ゴリオ爺さん』と並ぶ名作『谷間の百合』の主人公フェリックス・ド・ヴァンドネスの兄。2017/04/18
ヤクーツクのハチコ
2
新婚夫婦の最初の亀裂が「新婚初夜の男本意の営み」とは。義理の叔母の「ルイ15世の御代ならあなたのような境遇に置かれた女性は、すぐにでも夫を罰したわね。今の連中は女性というものを知らないしその愛し方も知らないのよ」発言、ロココでは女性にデリケートな事柄の発言件あったのかのう2017/10/05
チャンドラー
1
「三十女」夫の無能を見抜いていた父の忠告も聞かずに結婚したジュリーは日々絶望し憂愁に苛まれていた。今とは違い、女は三十を過ぎれば酸いも甘いも噛み分け人生を達観する時代。情熱的な本物の恋を知り、不運の連続で長女ばかりか末娘もまた波乱の人生を予感させる。「家庭の平和」1809年、フランス貴族社会が最も裕福な時代に社交界に現れた素性の知れない貴婦人と若い軍人と男爵の恋の駆け引きに大粒ダイヤと浮気話が絡む。ダイヤを取り戻す貴婦人の手腕が冴え「三十女」のジュリーとは対極だ。バルザックが結婚観・女性観を分析する。2021/07/07