出版社内容情報
ネガティブ・ケイパビリティは、人間の能力や創造性の一環として、未知の状況や矛盾した感情、曖昧さ、不確実性に直面し、それらを受け入れる能力を指す。これは、固定された思考パターンや既存の概念やルールにとらわれることなく、新たなアイデアや洞察を生み出すために必要な能力である。
ネガティブ・ケイパビリティを持つ人は、矛盾や不確実性に対して耐えることができ、それを創造的な可能性として捉えることができる。彼らは自分の意識を開放し、複数の視点や相反する考えを同時に受け入れることができるため、より深い洞察や理解に至ることができる。
対人支援の現場にはいくつもの曖昧さや葛藤がある。代表的なものをあげると、
・相談者、クライエント、患者など支援を受ける側の人(以下、相談者)を取り巻く、時に相談者と利益相反する関係者の存在
・相談者(の可能性)に対する信頼と懐疑
・相談者の固有性と類型化による見(診)立て
そして、もっとも悩ましいのが、支援者の万能感(いつでも相談者の役に立てる存在でありたい)の保持と、無力感(役に立てないことがある自分)の受容である。言うまでもなく、1人の相談者であっても、すべての側面で長期にわたり(極端に言えば亡くなるまで)支援することはムリである。対人支援には物理的な限定性があるし、1人ですべてを担うのは難しい。にもかかわらず、それをしようとするのは、相談者に対して不誠実である。支援者は自分の支援の限界を受け入れながらも、できるだけ役に立とうと努力し続けるのである。
しかし、そもそも人はすぐに感じていること、考えていることをありのままに表現することは少ない。見方には、いくつものバイアスがかかっている。鵜呑みにすることは、漏れなく何らかの色のついたメガネをかけているのである。
ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中に留まり続けることができる能力」である。
内容説明
ネガティブ・ケイパビリティとは「性急に答えを求めずに、不確かさや、疑念の中に留まっていられる能力」「自分の枠組みを外して他者を理解しようとする共感的想像力」。曖昧さを受け入れてこそ、人の本質が見えてくる。「わかったつもり」が人の理解を妨げ、身勝手な「よかれのひと言」になる。対人支援はもちろん、組織開発、リーダーシップ、教育など広く人とかかわる仕事に不可欠な力。
目次
第1章 さまざまな分野でのネガティブ・ケイパビリティ
第2章 ネガティブ・ケイパビリティが必要になっている時代背景
第3章 対人支援とネガティブ・ケイパビリティ
第4章 対人支援場面におけるネガティブ・ケイパビリティの発揮
第5章 対人支援職エキスパート10人のインタビューから見えるネガティブ・ケイパビリティ
第6章 対人支援職の中のネガティブ・ケイパビリティ(第5章のインタビューのまとめとして)
第7章 ネガティブ・ケイパビリティを身につけるための研修とその結果(対象:キャリアコンサルタント)
著者等紹介
田中稔哉[タナカトシヤ]
メーカーで人事(採用・教育・労務・人事企画)業務に携わった後、コンサルティング会社にて新規事業開発、関連会社経営に従事。中小企業の採用支援、就職氷河期の大学生の就職支援事業の立ち上げを経て、日本マンパワー入社。キャリアカウンセラー(CDA)養成講座の開発、大学・高校向けキャリア教育プログラム開発、行政機関への雇用対策事業の提案・企画・運営、ジョブカフェのチーフカウンセラーなどの業務を経験し、キャリアコンサルティング事業、公的就業支援・雇用対策事業、中小企業診断士養成事業の担当取締役を経て、現在は代表取締役会長。キャリアコンサルティング協議会副会長、全国産業人能力開発団体連合会理事。実務教育学修士(専門職)。公認心理師。精神保健福祉士。1級キャリアコンサルティング技能士。国家資格キャリアコンサルタント。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。所属学会:日本キャリアカウンセリング学会、日本実務教育学会、日本マイクロカウンセリング学会(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
-
- 和書
- ザ・スタンド 〈上〉