出版社内容情報
市井の人々の間にニュースを伝える印刷物の代表として、「瓦版」の名前は現代にも残っている。しかし、瓦版の名称が実際に使われたのは幕末の間際、それも5年ほどのことであったことなどをはじめ、その実像には知られざる部分が多くある。本企画は、著者所蔵の膨大な瓦版コレクションをもとに、いかに庶民の間で読まれたかを踏まえ、瓦版のありようにせまるものである。
内容説明
心中、敵討、火事、地震―実物の瓦版を材料に、庶民の好奇心に応えた“非合法出版物”の魅力に迫る!
目次
第1部 瓦版とは何か(江戸庶民に愛された瓦版)
第2部 瓦版を読む(驚天動地「黒船」がやってきた;熱狂「敵討」の瓦版;この世の終わりか「安政江戸地震」;まだまだある江戸時代の大事件;泣き笑い 終わりゆく江戸時代)
著者等紹介
森田健司[モリタケンジ]
1974年兵庫県神戸市生まれ。京都大学経済学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間・環境学)。現在、大阪学院大学経済学部教授。専門は社会思想史。特に、江戸時代の庶民思想の研究に注力している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
64
非合法なれど、幕府黙認。判じ物が、庶民のニーズであり、落とし所也。黒船来航などの政治面と、震災や蒸気機関車などの社会・文化面の貢献は、現代と同様。特に後者では情報の精度のみならず、安否確認の一端を担うなど社会的役割を果たす。興味深いのが、『地震節用難事尽』。ブラックの中に滲む当時の考察。信仰的とも言える。一方、洒落っ気の利いた『見立番付』。中でも、庶民文化の代表”饅頭”!金龍山餅に虎屋かぁ。『近世やかま獅子退散図』も、記事がイケてる。慶喜の描写など、洒落っ気たっぷり!2019/02/16
澤水月
27
滅茶苦茶面白かった!下世話だけでなく火災震災時は真摯に正確な情報伝え直後に災いを笑いに転化した娯楽要素含むナマズ絵読み物求められていた。先の大震災でも直後に歌舞音曲サブカル漫画類が被災者から求められていたのを想起。非合法なため顔を覆った読売が楽器奏者従え歌うように売り、魯文や河鍋暁斎らにより質の高い絵や文で構成されていた(どんどんパクられるが)。イエロージャーナルだけでなく幕府弱体化につれ戦争の実情伝えようとする報道の萌芽が新聞が発行されたのち明治の世にもあったとは。ハマりそう。識字率と印刷力の高さ凄い2017/08/30
メルル
22
瓦版のイメージは娯楽だと思っていたが、時には真面目な内容を扱うこともあったのですね。でもやっぱり面白いのは、ワイドショー並みの娯楽。話を少し盛っていたりしても面白ければいいじゃない、という風潮も面白い。さすがは、非合法出版物。それにしても木版技術恐るべし。2017/08/22
bapaksejahtera
16
著者は歴史学者ではなく思想史が専門。細かい歴史事象の精査でなく、その下で移ろう民衆の心持に関する著作がある。本書ではドラマ等に屡々登場する瓦版をテーマに述べる。恰も今日の新聞号外のように描かれる瓦版売りの姿について、その誤りに釘を差した後、江戸初期に心中記事を契機に登場したそれが、幕政批判や社会不安の萌芽を齎す物として早期に非合法となった事を指摘。だがその建前の下に(著者によれば明治政府より)緩い統制の下、様々な展開があったとして、特に人気のあった災害報道や仇討の記事を中心に紹介する。気軽に読める良書だ。2025/07/17
リキヨシオ
14
時代劇でおなじみ「瓦版」のというメディアの正体は、表現の自由がなかった江戸時代に庶民を熱狂させた「非合法出版物」。顔を隠した「読売」と呼ばれる売り子により販売された瓦版の鉄板ネタといえば「敵討」で女性と政治が絡めば大人気(正確性には欠ける)!その一方で地震や火事など「天災地変」に関しては高い正確性を持っていた。取扱い禁止だったのは「幕府批判」と「心中事件」。心中=世の中への絶望=幕府が営む世界の否定へとつながるから厳しい取り締まりがあった。非合法だったから人気の瓦版には海賊版も横行したとの事。2020/03/23