内容説明
1976年、強盗殺人の罪を犯した30歳の青年。言い渡された判決は「無期懲役」だった。希望と絶望の間を行き来しながら過ごした長すぎる刑務所の日々。そして31年後、ついにシャバへ戻った彼が目にした「現実」とは―。体験した者でしか語り得ない長期刑の重みと、数々の有名受刑者たちが語った本音。裁判員裁判時代のいま、「罪と罰」の本質を考えさせる、全国民必読の書。
目次
序章 浦島太郎
第1章 無期懲役に処す
第2章 大阪刑務所第四区
第3章 灰色の青春―千葉刑務所の顔役たち1
第4章 熱中時代
第5章 蜃気楼―千葉刑務所の顔役たち2
第6章 蕩児の帰宅
著者等紹介
金原龍一[カネハラリュウイチ]
1946年生まれ。1976年に東京都内で強盗殺人事件を起こし、無期懲役判決を受ける。大阪刑務所、千葉刑務所に31年間服役した後、2008年に仮釈放され社会に復帰した。服役中は模範囚として過ごし、千葉刑務所では囲碁・将棋大会の連覇記録を打ち立てたほか、短歌クラブ、書道クラブ、バンドメンバーとして活躍した。著者名はペンネーム(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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蓮華
8
31年刑務所で過ごした人が、刑務所の生活、仕事、感じたことを書き留めた本。意外と快適に過ごしていたのかなと感じた。 毎日同じことの繰返しの生活で、そのうち罪悪感が薄れてくるという記述は遺族には耐えがたいのではとも。 あとがきの無期懲役者を早く出所させるべきという考えには賛同できない。2017/08/20
澤水月
5
金属バット殺人の一柳が獄中野球大会ではスイングがなってない、やはりトラウマか…とか! 見沢知廉の寡黙かつ情報網の巡らせ方、オウム林郁夫の医師としての片鱗、女子高生コンクリ詰め主犯宮野のお調子者ぶり、あさま山荘吉野が介護に専念し…31年を「塀の中」で過ごした著者の観察眼、文章力が光る。それだけに実に単純短気な殺人で無期を食らったのが不思議さを感じる。「無期と言っても15年くらいで出れるんだろ」と思う人は多いだろうが実は最近無期仮釈は30年以上の傾向だそう。(コメントに続2013/07/16
JunTHR
2
おもしろかったー!!タイトルにあるように、獄中で出会った囚人たちとのエピソードを中心にした獄中記で、金嬉老、大道寺翔司、菅家利和、林郁夫、女子高生コンクリート詰め事件主犯などなどビッグネーム連発で読み応えあり、タイトルは盛ってはいるが偽りは無しと言えるレベル。あとは、たばこを3分の1くらいに切って金玉の裏にテープで貼って隠し持つとか獄中記のお楽しみの小ネタや鉄板の看守ネタも。反省・後悔と脳天気さのバランスもよく、読みやすくてよかったな。冒頭の「浦島太郎」感の描写もなかなかインパクトある。2014/04/02
みじんこ
2
著者自身の長期刑生活で出会った、悪い意味で個性的な凶悪な受刑者たちとの関わりから社会復帰までを描く。自身の出自や犯した罪も最初の方に詳細に書かれている。刑務所内での短歌・俳句の会やスポーツなどのクラブ活動の様子も書かれていて、実にいろいろなことができるものだと驚く。著者の技能も多彩だ。刑務官や受刑者も人情ある人のエピソードも時々出てくる。著者も殺人さえ犯していなければ、今頃円満な家庭を築いていたかもしれない。刑務所に入って良かったことは一切ない、自身が書いたこの箇所が真理であると思う。2013/08/01
うたまる
1
「眠りえぬ者に夜は長く、疲れたる者には僅かな道も長し」……強盗殺人事件により31年間服役した著者の獄中交遊録。金嬉老事件、三菱重工ビル爆破事件、足利事件、連合赤軍浅間山荘事件、金属バット殺人事件、オウム事件、女子高生コンクリート事件など、日本の戦後犯罪史を彩る犯罪者たちの獄中での姿を垣間見ることができる。当然かもしれないが皆凶悪犯罪を犯したようには思えない穏やかでユーモラスな生活ぶり。人というものは自由であるよりも、規律や義務で少々不自由な方が人格が練れるものなのかもしれない。2016/03/05