内容説明
ヨーロッパ近代教育思想の根源でもある人間の「完全性」。初期キリスト教思想に由来するこの概念には、神との交わりや他者とのつながりなど、人間が生きるための力動の「存在」があった。カルヴァン派による外在的規範の内面化、フランス啓蒙思想によって生じた利己心、そして近代合理主義―その後ヨーロッパを覆った時代のうねりの中、現代にまで継承されている「完全性」概念の系譜およびその近代教育思想とのかかわりを眺望した一冊。
目次
序章 忘失される完全性―「存在」の力動
第1章 「存在」と完全性―キリスト教思想の交感と出来
第2章 義認と完全性―プロテスタンティズムの慈愛と意志
第3章 理性と完全性―世界の秩序と恣意
第4章 自然と完全性―フランス啓蒙思想の理性と交感
第5章 教育と完全性―ドイツ教育思想の未来と超越
第6章 思考と完全性―ニーチェの「存在」の力動
終章 他なるものの到来―存在論的なもの
著者等紹介
田中智志[タナカサトシ]
専攻:教育学(教育思想史・教育臨床学)、現職:東京大学大学院教育学研究科教授。履歴:1958年、山口県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(教育学)東京大学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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