内容説明
自由と友愛の共通世界―その基底をなす「他者」と「複数性」。テロルとイデオロギーによってすべての人間を巨大な「単数」に組織する全体主義と対比して、本書が強調するアレント思想の核心は「複数性」である。アレントが自由と友愛の共通世界として志向するのは、各々が「他者」である「複数」の人間から成る共同体であり、その成立を巡って本書で考察される政治論、文化論、人権論、権力論等のすべてにもこの「複数性」が貫通しているが、それは純一を尊ぶ日本の「和の精神」の、あるいは対極にあるものかもしれない。
目次
第1章 世界への愛(アレントをいかに読むか;「他者たちと関連づけられた自己」 ほか)
第2章 政治・自由・他者(政治と自由;自由と他者 ほか)
第3章 趣味判断論―共通世界と他者(芸術と政治;趣味判断、他者の現前、共通世界 ほか)
第4章 人権論―“諸権利をもつ権利”と共通世界(“諸権利をもつ権利”、複数性、共通世界;現代社会と居場所のない者 ほか)
第5章 権力―デュルケムの「力」との関連で(「権力」と自由―アレントの場合;集合的沸騰と力―デュケルムの場合 ほか)
第6章 “公共性”論の位置―デュルケム、バウマン、アレント(デュケルム;バウマン ほか)
著者等紹介
中島道男[ナカジマミチオ]
1954年島根県生まれ。1977年京都大学文学部卒業。1981年京都大学大学院文学研究科博士課程中退。現在、奈良女子大学文学部教授。専門は理論社会学・社会学説史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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