内容説明
パターナリズムからケアへ。教育は目的の王国であり、陶冶と能力開発を至上目的とする近現代教育は、生徒という「存在」のためというよりも、生徒を「目的」へ向け牽引するパターナリスティックな行為となる。不登校、高校中退、校内暴力といった目的に逆らう行動は、「病的」な非倫理と刻印され、教育からの追放・離脱に帰結するほかはない。だが医師にとって病は何ら「病的」ではないのだ。ケアの場で見るような関係性のあり方を、教育現場において追求・考察した、優れて今日的な実践的理論の展開。
目次
第1章 問題の所在(低空飛行の実現―研究の目的;教育関係論のミニマリズム―先行研究と独自性 ほか)
第2章 なぜ彼らは離脱するのか―関係性の論理(「意味ないし」の意味論;離脱へと仕向けるもの ほか)
第3章 述語論理とケア―「かけがえのなさ」の考察(かけがえのなさという現象;個に根拠はない(ハイデガー) ほか)
第4章 「気がかり」と「待ち望むこと」―ケアの現象学(学校空間を特徴づけるもの;存在の耐えられない軽さ ほか)
第5章 招かれざる者の歓待―教育関係の原風景(仕組まれた応答関係;強迫としての応答関係 ほか)
第6章 結論(結び目を解くこと(d´eliaison)
思い通りにはいかないこと ほか)
著者等紹介
川久保学[カワクボマナブ]
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部西洋哲学科卒。東京学芸大学連合大学院博士課程修了、博士(教育学)。現在、神奈川県立小田原高校総括教諭・横浜国立大学教育人間科学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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