出版社内容情報
「ジュバ虐殺」から10年――虐殺を生き延びた南スーダン、ヌエル社会の人々は、隣国ウガンダで難民としての新たな生を営み始めた。難民とは、果たして私たちがイメージするように、脆弱で支援を求める受動的な犠牲者に過ぎないのだろうか。本書では、太古より遊牧の歴史を歩んできたヌエルの人々が、避難先で新たな秩序をどのように創り出し、他者と生きる方法をどう編み出してゆくのかを報告する。
タマリンドの木は、南スーダン各地に伝わる起源神話において、人類の「故郷」や「母」を意味する。難民となったヌエルの人々は、避難先に新たな「タマリンドの木」を見つけ、その木の下で悩み、世界に対する問いを発していた。「難民の世紀」において、私たちは彼らから何を学ぶことができるだろうか。
本書では、南スーダンの紛争後社会を生きる人々が持つ、既存の秩序と向き合い、自らの生を生き直す技法を、南スーダンの避難民キャンプとウガンダの難民居住区でのフィールドワークから明らかにする。南スーダン難民の生活や文化・政治活動などを捉えた写真多数収録。
内容説明
難民として生きることとは。内戦から逃れて国内外の難民キャンプで暮らす南スーダンの人々。長年にわたる難民生活の中で、彼らが決して手離さなかったものとは。「難民の世紀」における新たな民族誌。
目次
第1部 問題と予期―私たちのことばと南スーダンの歴史(境界線の話法、問いとつながりの技法―問題はどこから生まれるか;“予期のセット”が生み出す境界線―民族は存在したのか;増殖する境界線―人々は民族をどう生きたか)
第2部 “家”―難民たちが創り上げる秩序(小さなチエン―避難民キャンプは人々を救済したか;大きなチエン―模倣は国家を越えるか)
第3部 子宮と墓―神話と牛が語るいのちの持続(タマリンドの木の下に集う―世界樹は何を語るか;侵犯する血―牛から逃れて生きることはできるか)
第4部 若者は問う―複数の秩序との付き合い方(真正の男とコピーの男―「本物の人間」とは誰か;窮状を笑う―「わたし」は「あなた」になることができるか)
著者等紹介
橋本栄莉[ハシモトエリ]
1985年新潟県生まれ。2009年より南スーダンでフィールドワークを始める。専門は文化人類学。2015年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。ジュバ大学平和開発研究センター研究員、日本学術振興会特別研究員、高千穂大学人間科学部准教授などを経て、立教大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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