内容説明
『在明の別』は平安最末期に成った王朝物語の傑作である。藤原摂関家存亡の危機に際し、春日の神の加護のもと人間界に降誕したヒロインが、たった一人で男女二人分の役割を担い、見事に家の繁栄をもたらす奇想天外な物語は、天下の孤本でもあるため、解釈困難箇所満載の物語でもあった。本書は、文献学的方法を駆使して難解な物語本文を鮮やかに読み解き、ヴェールの向こうに朧げに見えていた物語世界を、くっきりと浮き上がらせる。
目次
『在明の別』への誘い―異性装と隠形の物語
前編 『在明の別』を読む(作中和歌から何が見えるか;左大臣の恋;父と娘の旅路;右大将は誰に向けて和歌を詠んだか;死にゆくふたりを結びつける原点)
後編 『在明の別』の本文校訂と読解(巻一読解考―「この君はかりかにこもり給て」を中心に;巻一本文校訂・読解考;巻二本文校訂・読解考;巻三本文校訂・読解考;巻三読解考―中宮出産の場面を中心に)
著者等紹介
辛島正雄[カラシママサオ]
1955年生まれ。山口県下関市出身。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。九州大学文学部助手、徳島大学教養部講師、九州大学教養部助教授などを経て、2021年3月まで、九州大学大学院人文科学研究院教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chisarunn
5
長い間、散逸物語とされてきた「在明の別」は戦後、奇跡的の発見され、1900年代後半には二三の注釈書も上梓されたのだが、まだまだ充分とはいえない研究野だった。2021年、読みやすい校訂文とわかりやすい問題点の提起を携えてこの本が出版された。詳細な現代語訳がついているわけではないにもかかわらず、端々にストーリーの流れに対する読み手の興味を失わせない巧みな構成がなされていて、ほとんど物語を読んだ気分になれる。完全な注釈書が出版されたらぜひ読んでみたい。2023/11/19
わたなべ
0
全然普通に研究論文2025/03/05